ヨセミテ国立公園の始まりは「自然保護の父」による尽力

こうした本来の自然の姿と、森に入ってきた人間がどう共存するのか・・・実はヨセミテ国立公園はその始まりから、自然保護がテーマでした。

ジョン・ミューアの写真

先ほどのトレッキングルートの名前にもなったジョン・ミューアは、「自然保護の父」と称される植物学者。

セオドア・ルーズベルト大統領とジョン・ミューア

ミューアは、セオドア・ルーズベルト大統領と一緒にヨセミテでキャンプして、自然の大切さをアピールすることまでしています。彼の活動もあって、1890年にヨセミテは国立公園になりました。

その中でキャンプ場やホテルなど観光客用の施設が設けられているヨセミテ渓谷は、国立公園全体のほんの5%にすぎません。残りの95%は原生地域(ウィルダネス)で、人の手が加えられることない自然環境として開発から厳格に保護されています。

このようにクマなどの生きる自然環境をメインとし、人の入っていくエリアを限定。さらにクマロッカーにクマ缶、さらにはクマ特捜隊まで動員して、ヨセミテでは人とクマの共存を図っているのです。

アメリカ初、そして世界初の国立公園は、やはり世界遺産の「イエローストーン国立公園」で1872年に指定されました。ヨセミテが国立公園になったのはそれよりも遅いのですが、自然保護の始まりの地として、イエローストーンと並んでアメリカの国立公園の発展に重要な役割を担ってきたとされています。

執筆者:TBSテレビ「世界遺産」プロデューサー 堤 慶太