2020年、富山市のスナックで、口論になった男性を階段から突き落として死亡させたとして、傷害致死の罪に問われた男の裁判員裁判。被告の男は「被害者が階段を踏み外して落ちた」と話し、自分の暴力が原因で死亡したのではないと起訴内容を否認し、警察や検察が「自分の記憶と違う内容の供述調書を作成した」と主張しています。

傷害致死の罪に問われているのは、住所不定、無職の髙橋亮被告(47)です。起訴状によりますと、髙橋被告は2020年11月、富山市総曲輪のビルの階段で、当時51歳の男性を押し倒すなどして階段から転落させ、死亡させたとされています。

スナックで酒を飲んでいた際に口論になり、揉み合いの末、階段から転落したとされるこの事件。裁判では、髙橋被告が男性を押し倒したかどうか、そして被告の暴行が被害者の死亡につながったかどうかが争点となっています。

20日の被告人質問で、髙橋被告は事件の経緯について、被害者が被告の胸倉をつかんだため、被告も被害者の胸倉をつかみ返し、その後、被害者が被告の肩を押したところ、その勢いで自分で階段を踏み外して転落したと説明。

検察官:
「あなたが胸倉をつかまなくても、
被害者は勝手に転落したということですか?」
髙橋被告:
「被害者が自ら肩を押した勢いで
 落ちているので、自分が胸倉をつかむ、
 つかまないの問題ではないと思います」

裁判では、現場に駆け付けたスナックの従業員が、男性の転落直後に髙橋被告が「被害者を押し倒した」と語っていたことを証言していますが、それについても髙橋被告は「押した、ではなく落ちた、と言った」と反論し、スナックの従業員による聞き間違いだとしました。

髙橋被告は、起訴される前の警察や検察の取り調べでも、被害者が自ら階段を踏み外して転落したと説明したにも関わらず「自分の記憶と異なる供述調書を作成された」としていて、きょうは取り調べ段階での供述と食い違う点について、繰り返し被告人質問が行われました。

検察官:
「自分の都合の悪いことは覚えていないと
 言って、都合のいいことは説明している
 ということはないですか?」
髙橋被告:
「そんなことはないです」

髙橋被告は、弁護人から、亡くなった被害者の男性についての思いを問われると「私は被害者を押し倒してもいないし、暴力が原因で亡くなったわけではありませんが、不慮の事故で亡くなったとしても、その場にいたので、亡くなったことに対してつらい気持ちはあります」と話しました。

次回公判は11月24日に開かれ、結審する見込みです。