■子どもは未来そのもの
話を伺っていると言葉の端々に人として当たり前のことをやってきた矜持のようなものが感じられ、「陰徳」とか「利他」とか「無私」とかいう言葉は尾畠さんのような人のためにあると感じました。尾畠さんは子どもについて語る時は相好を崩し、好々爺の優しい表情を見せます。そして、日常生活の中で以前から気になっていることがあるので、忘れずに実践してほしい。それが願いなので、必ずみなさんに伝えてくださいと託されました。「子どもを連れて道路を歩く時は歩道があってもなくても、車道側を大人が歩いて、子どもの手を必ず繋いでください。持ってたボールが落ちて道路に転がったり、丸い飴玉などが子どものポケットから落ちて車道に転がったら、子どもは急いで取ろうとするものです。その時に車に注意を払わないのが子どもです。子どもは未来そのものです。交通事故にあわせないためにも、是非、実践して欲しいと思います」

ご自宅でのインタビューがすでに2時間を超え、梅雨明けまじかの今にも泣き出しそうな灰色の空をのぞむ窓から、小さな野鳥のさえずりが聞こえた時でした。不意に尾畠さんが何かを思い出したような表情を見せました。少しの間があり、そして、しみじみと訴えかけるように言葉をつないでくれました。
尾畠春夫さん「命にかえられるものは何もありません」
(聞き手 大分放送デジタル報道部 羽田野哲彦)
ー6月25日 尾畠春夫邸にてー