「影武者説」「死亡説」の発信源、ソロヴェイ博士と『SVR将軍』の謎

一連の情報の発信源は、モスクワ在住の政治学者ワレリー・ソロヴェイ博士とロシア情報機関元高官を名乗る人物が主宰する匿名のテレグラム・チャンネル『SVR(対外情報庁)将軍』。ソロヴェイ氏が自らのYouTubeチャンネルで語る内容と『SVR将軍』の発信する内容はほぼ同じだから、連動しているとみていい。
ソロヴェイ氏はBS-TBS『報道1930』とのインタビューで「そのテレグラム・チャンネルとは何の関係もない」と関係性を否定したが、「私が入手している情報と一致することが多いのは事実で、情報の信憑性の証拠でもあると思う。ロシア政府の現状を正確に反映している情報だ」と説明した。

ソロヴェイ氏は外交官や情報機関員を養成するモスクワ国際関係大学の教授を務めていたことから、「私の情報源はロシア政府の官僚。多くの教え子がいる。大学で教えていたお陰で政府の意思決定機関もしくはその近くにいる人たちにアクセスできる」と主張している。
実際に、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻の1年前に「戦争は決まったことだ」と明言し、数か月前には開戦の時期まで的中させた。その一方で2017年と2020年に「プーチン大統領は近く退任する」と主張したがそうならなかった。独立系メディア『メドゥーザ』はソロヴェイ氏について「突飛な陰謀論を広めることで知られる」と評し、発言に信憑性はなく「空想物語」をエスカレートさせていると断じる専門家もいる。
筆者がむしろ注目するのは、モスクワに住むソロヴェイ氏が“プーチン氏を貶めるような”発信を毎日のように繰り返しているのに、なぜ逮捕・投獄されないのかという点だ。クレムリンのナンバー2、ニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記一派との繋がりが度々指摘されるが実態は不明だ。
そんな中、ソロヴェイ氏と『SVR将軍』の主張がまんざら偽情報ばかりではない可能性が浮上した。