長時間働いても「給特法」で残業代支給されず
取材した日の勤務時間は午前7時~午後8時で残業時間は約4時間半。さらに1軒、家庭訪問に行くといいます。授業以外で1人1人の要望に合わせた対応が求められ、勤務が長くなるといいます。
(石原健太郎先生)
「(Q仕事を自宅に持ち帰る?)今もうカバンの中に入れています。本来であれば家庭訪問がなければもう少しやって帰ろうかなと思っていたんですけど、どうしても1軒、行きたいところがありますので」
実は長時間働いても『給特法』という法律によって公立学校の先生には残業代が払われないといいます。給特法とは1971年に定められた公立学校教員の給与に関する法律です。月額給与の4%が上乗せされる代わりに残業代や休日勤務手当が支給されません。そこには「教員の仕事は専門的で、教員の自発性によって現場が運営されるべき」という考えが根底にあります。
裁判で大阪府と争う教員『時間外労働が月120時間超で適応障害に』
こうした現状に一石を投じた教員がいます。大阪府立高校に勤める西本武史先生(34)です。西本先生は裁判で職場である大阪府と争っています。
西本先生は2017年、クラス担任とラグビー部の顧問に加えて、海外留学の案内役も務めていました。当時、時間外労働は1か月で120時間を超え、適応障害と診断されて、計約3か月半、休職しました。
(大阪府立高校 西本武史先生)
「例えば夜に終電で帰って電車を待っている時に、ふらふらっと飛び込んでしまいたくなることもありましたし。あの時は本当に“ただただ楽になりたい”“今飛び込めば全て楽になれる”というふうな心境でした」
西本先生は自分の体調をメールなどで教頭や校長に何度も伝えていたといいます。
【西本先生が校長に送ったメールの内容】
『適正な労務管理をしてください』
『精神も崩壊寸前です』
(西本武史先生)
「しなければいけない仕事、学校長から言われた仕事を一生懸命やる中で体を壊したら、それは使用者に責任があるんじゃないですかと」
今も同じ高校で教壇に立つ西本先生。仕事を自宅に持ち帰る日がほとんどだといいます。
(西本武史先生)
「教員って生徒の成長が見たくて教師になっている人間が多いので、生徒の成長のために“やってしまう生き物”だと思うんですよね」
だからこそ上司はきちんと勤務時間を管理して勤務内容を是正してほしいと訴えます。
これに対して今年1月、証人として出廷した当時の教頭は次のように話しました。
(元教頭が述べた内容)
「教員は自分で計画を立ててやっていく自発性があります」
そして大阪府側は「給特法では時間外勤務のほとんどが自主的・自発的だから、勤務時間の把握や管理職の安全配慮義務には限界がある」として訴えを退けるよう求めました。