世界との格差を突きつけられる熊本 台湾の半導体メーカー進出で

村瀬健介キャスター
「キャベツ畑が広がる熊本県菊陽町、巨大な半導体工場が建設されています。いま世界最大手の半導体製造企業が進出し、地元では賃上げの議論を余儀なくされています」

進出したのは台湾の半導体メーカー「TSMC」。すでに従業員の採用が始まっていて、初任給28万円が提示された。これは熊本県の平均より8万円も高い金額で、地元の企業は人材が奪われることを懸念している。

賃上げの必要性に直面する中、県内の最低賃金も時給で過去最高の45円引き上げとなる898円に決まった。しかし、議論の過程では経営者側の厳しい実情が浮き彫りになった。委員の1人として議論に参加した商工会連合会の役員は…

熊本県商工会連合会 原悟専務理事
「私も含めて経営者側の委員は全て反対した。廃業や倒産という大きな影響が出る心配もあり、その額はとても受け入れらない」

県内でスーパーマーケットを展開する「菊屋」は引き上げの厳しさを感じている事業所のひとつだ。新しい最低賃金を下回ってしまう従業員が多く、10月から賃上げした。時給45円の引き上げとはいえ、月にすると15万円近く人件費が増える計算になるという。

なごみマルシェ菊屋 東隆文社長
「その分売り上げ・利益を取れるかと言えばそんな簡単には取れない。スーパーは一般的に(利益率)20~25%なので売り上げを100万近く上げないと」

商品の仕入れ値も軒並み値上がりしている。しかし、売値に反映しきれておらず、その分が店側の負担となって重くのしかかる。

なごみマルシェ菊屋 東隆文社長
「正直値上げしたいんですが、やはり競争社会。小さな店は特に大手の店とある程度価格を合わせないと。小さい店は仕入れ量が少ないので仕入れ価格も安くない。売り上げが伴わずに人件費が上がる。どうやって稼いでいくか一番頭が痛いところ」

人手を効率よく回すため、従業員の多くは持ち場を掛け持ちしている。社長も自ら魚をさばく。魚の骨もフライにして売り上げにつなげようとしていた。長年勤める従業員は…

勤続23年の従業員
「(Q.賃上げは生活費が上がるペースに)追いついていないと思う」

東隆文社長
「本当に長く勤めておられるので、(賃金を)大きく上げてあげたいんだけどね…」

なごみマルシェ菊屋 東隆文社長
「(Q.物価高に追いつくくらいの給料の引き上げが必要だと政府がしきりに言ってますが)そんなに簡単にいけばこれほど悩まない」