政府が旗を振る賃上げ。物価高に見合う給料アップがなかなか実現しない中、大幅に賃上げした旅館があります。その秘策とは。

“限界がある”介護現場の苦悩

低賃金が指摘されているのが介護業界だ。介護施設で調理を担当している海口健太郎さん。物価高でも利用者の食事代を値上げしないために、やりくりしながら食材を仕入れていた。

介護施設で働く海口健太郎さん
「むね肉の方が断然安いのでむねで。できればもも肉を使いたいなとは思うんですけど、ちょっと予算との兼ね合いで」

愛知県春日井市の「デイサービス てとりん村」。1日の定員18人の小規模介護施設だ。昼食は毎日同じ価格で3、4種のメニューから選ぶことができる。

てとりん村 利用者
「これはにしんです、私が食べているの。(故郷の)北海道でずっと食べてました」
「おいしい何食べても。だから私は休んだことないデイサービスを」

入浴やレクリエーションなど、サービスの質を維持してきた結果、物価高や光熱費の高騰で、2022年に初めて赤字となった。

介護保険制度では、施設の運営は国が3年ごとに定める介護報酬の範囲内でやりくりしなければならない。サービスごとに提供価格が決まっているため、光熱費や食品などの物価があがり、経営が赤字になったとしても、事業者が自由に価格転嫁することはできない。

家族介護支援てとりん 岩月万季代代表
「自分たちではもうできることがないということですね、限界がある」

こうした状況で職員の給料をあげることは難しい。81歳の女性を介護する岩田修さんは73歳のヘルパーだ。パートタイムで週3回勤務している。

ヘルパー 岩田修さん(73)
「人手がないので、それを補うために高齢者がやってもいいんじゃないか。働ける方で働いて頂いて社会の一場面でも支えられれば良い」

最年少は27歳の坂田桃子さん。大学を出て2021年に介護福祉士の資格を取った。

介護福祉士 坂田桃子さん(27)
「魅力だなって思うのは、人生の中で最後、歳を取っても自分らしく生活をされる利用者さんを見て、そこをサポートできてるっていうのがすごく嬉しいし、いろんな感情に寄り添いながら一緒に楽しい時間を過ごせるというのがすごく楽しい」

高齢者を笑顔にしようと、やりがいを感じて働くスタッフたち。ただ、介護職員の1か月の給料は、全産業の平均に比べておよそ7万円低い。給料を上げられないことは人材不足にもつながっている。10月に職員の募集をかけたが…

家族介護支援てとりん 岩月万季代代表
「5人求人ありまして、うち4人が60代の未経験の男性だった。(Q.60代未経験を採用にはならない)いやいや、採用になっていきます。それぐらい人が欲しい

介護報酬は来年度改定されるが、現場の状況を踏まえた額にしてほしいと岩月さんは訴える。

家族介護支援てとりん 岩月万季代代表
「物価高騰に見合ったもの(介護報酬)をつけていただく。そこがないともう現場の人に何時間でも働いてくれだとか、 給金が安くても頑張りましょうみたいなことでは、もう生活が成り立たないんです」