経済制裁の影響に苦しむ国民の間には、イランがハマスの戦闘に干渉することで経済と生活がより悪化することを懸念する声があると、カハラマンプール氏は指摘します。

独立系メディア、イラン・インターナショナルは、先月21日、イラン国内で行われたデモの様子を伝えています。その映像の中には、ハマスの戦闘に参加すべきではないと訴えるかのようなスローガンが…

デモ参加者
「ガザでもレバノンでもなくイランのために命を捧げる」

一方、イスラエル情報当局の高官を務めたアヴィ・メラメド氏。イラン政権はアラブ世界での自分たちの立場を守る為の判断を迫られる日が来ると分析しています。

元イスラエル情報当局 メライド氏
「イラン政権はアラブ世界に対して“我々はヒズボラやハマス、イスラム聖戦といった恐怖の軍隊を作り、イスラエルを撲滅するために戦うのだ”というストーリーを展開しています。そして、アラブ世界の多くの人々がそれを実現し、拍手喝采をおくりました。アラブ世界の人々は完全にその話を信じていたのです。」

イランはこれまでイスラエルとパレスチナを対立させることで、自らの存在感を高めていたのだと言います。

元イスラエル情報当局 メライド氏
「そのためにイラン政権は、“炎の環”というものを作り上げました。炎の環とは、レバノンのヒズボラ、ガザのハマスやイスラム聖戦、イラクのシーア派民兵、アフガニスタンやパキスタンのシーア派民兵など、イランが支援するテロリズムの軍隊のことを指します。つまり、レバノン、シリア、ガザ地区という3つの舞台が、イスラエルをぐるりと取り囲んでいるのです。暴力を煽り続けることができなければ、パレスチナを解放し、パレスチナ人を守るというストーリーを売ることができません。」

メラメド氏は、これまでのところ、イスラエルへの批判も高まりイランにとっては悪くない状況になっていると分析します。

元イスラエル情報当局 メライド氏
「イランの都市はミサイルやロケット弾で爆撃されていません。イラン人は殺されていません。イランの政権は、非常に巧妙に、非常に単純なことをしています。周りにいる人を犠牲にしているのです。イラク人、イエメン人、イスラエル人、シリア人、パレスチナ人を犠牲にしています。イランは自分たちの利益のために代理人を利用しますが、その一方で、彼らの暴力や侵略、過激なイデオロギーには何の影響もありません。イラン政権にとっては、とても都合の良い状況なのです。」

そうした中、メラルド氏は、今イランはある決断を迫られていると言います。

元イスラエル情報当局 メライド氏
「今、イラン政権はジレンマを抱えています。ハマスとイスラム聖戦を救うために、最大かつ最強の代理人であるヒズボラに本格的な参戦を命じるのか。それともハマスとイスラム聖戦の崩壊というシナリオを受け入れるのかというジレンマです。しかし、一番のジレンマは、ヒズボラをイスラエルとの戦争に送り込めば、全面戦争になるということです。」

そして、その決断をするには、あまり時間が残っていないと言うのです。

元イスラエル情報当局 メライド氏
「イランは決断を迫られています。イスラエルがすでにガザ地区のハマス指導者の頭上に居座り、イスラエルの機械的な攻撃によってハマスがどんどんどんどん押しつぶされているのであれば、イラン政権が最後の瞬間にやってきて、“今こそハマスを救うぞ”とは言えないでしょう。手遅れになるからです。イランはいつ参入させるか決めなければなりません。この戦争に参戦するか、ハマスとイスラム聖戦を放棄するかのどちらかです。」