ロシアによるウクライナ侵攻から4か月。ウクライナを支援する西側諸国では、物価高やエネルギー不足が深刻となり、国民の間には政府への不満も広がっている。
こうした中、ロシアはドイツなどへの天然ガスの供給を止める“逆制裁”に打って出た。G7やNATO首脳会議を前に、新興国のブラジル、ロシア、インド、中国で作る枠組みBRICS首脳会合を開き、対立を鮮明にするロシア。西側諸国はプーチン氏の思惑に耐えることは出来るのだろうか?

■“逆制裁”に出たプーチン大統領狙うは西側分断か

EUは6月23日に首脳会議を開き、ウクライナとモルドバを「加盟候補国」として正式に認定する方針で合意した。この1週間前、ドイツ、イタリア、フランスの首脳は、ウクライナのEU加盟を支持すると表明していた。ロシアによる“逆制裁”が発表されたのは、まさにその前日のことだった。

ロシアはドイツに繋がるパイプライン「ノルドストリーム」による天然ガスの供給を6割減らすと発表。ドイツ経由で天然ガスを輸入しているフランス、オーストリア、チェコへの影響も必至となる。
また、イタリアに対しても天然ガスの供給量を5割減らした。理由はタービンの修理。ロシアのペスコフ大統領報道官は、「制裁でタービンの修理に問題が生じているのが原因」と語ったが、それを信じる者はいない。

ヨーロッパからの収入を断つことも辞さずに、ロシアは自ら供給を停止した格好だ。朝日新聞の駒木論説委員は、ロシアは「制裁を課している国との関係を見直し始めた」とみている。

朝日新聞 駒木明義 論説委員:
「かなり本気で欧米との対立も辞さない構えだと思う。ロシアは天然ガスを武器にしてこれまでも供給を絞ってきたと言われるが、これまで契約を破ったことはなかった。もちろん収入が入ってこないとか、安定供給というロシアの立場を傷つけるとかマイナス面もあるが、そうしたことはもう気にせず、制裁を課している国との関係はもうある程度見限っていこうということだと思われる。
今後、仮に戦争がどこかの段階で停戦したとしても、恐らく西側はまたロシアから輸入するとはならない。供給は減らしていく一方であるということを見切ったうえで、ロシアはやっているのだと思う」

防衛省防衛研究所の兵頭政策研究部長は、ロシアの狙いは、エネルギー高騰に苦しむ世論の高まりを利用することではないかとみている。

防衛省防衛研究所 兵頭慎治 政策研究部長:
「ロシア側がかなり思い切った逆制裁を始めたなと思う。EUもまだまだ天然ガスの禁輸には踏み切れないところでありながら、ロシアの方から供給を停止するという、これによりかなりEU各国は揺さぶられる。今後、ヨーロッパのなかでもエネルギー価格の高騰、物価の高騰などによって国内世論、ウクライナの戦争を早く終えてほしいという世論の高まりを狙っているのではないかとも見える。今回、ロシア側から天然ガスを止めるという逆制裁を使いながらヨーロッパの中で早期停戦の声を高め、ウクライナに停戦圧力を、ヨーロッパを経由して圧力をかけるという思惑もあるのではないか」

民主主義の弱いところ…“世論の顔を伺わねばならない”ことに付け込んだプーチン氏の戦略に、西側はどうするのか。