「私たちは迫害の為に話すことを恐れている」
ユダヤ人のために建国された国イスラエル。人口約950万人。内ユダヤ人が75%を占めるが、実は21%はアラブ系の人々だ。イスラエル国籍を持ったパレスチナ人は今、どんな思いで状況を見つめているのだろうか。取材に応じてくれたのはユダヤ系とアラブ系が共存する地域ハイファ在住のジャーナリストだ。
アラブ系イスラエル人 ジャーナリスト マイド・カヤル氏
「アラブ系イスラエル人が逮捕されている。SNSに戦争について直接書いたり意見を述べたりした場合だけじゃなく、戦争を止めるべきだと投降した人に“イイね”をクリックしただけでも、喪に服すために黒いプロフィール写真をアップしただけでも逮捕される」
これまでもパレスチナ人の人権を訴え何度も逮捕されてきたカヤル氏だが、今回は特別だという…。
アラブ系イスラエル人 ジャーナリスト マイド・カヤル氏
「イスラエル人全体が兵士や情報提供者になっている状況だ。私たちは迫害の為に話すことを恐れている。迫害は毎日、大規模に起こっている。状況を理解するのにはイスラエル警察最高司令官の言葉を借りるのが一番いいかもしれない」
その言葉がこれだ。

イスラエル警察最高司令官 コビ・シャブタイ長官
「戦争への抗議行動は許可しない。抗議する者たちを捕まえるように指示している。ガザに気持ちを寄せる者はとっととバスでガザに送る」

アラブ系イスラエル人 ジャーナリスト マイド・カヤル氏
「パレスチナ人がガザで殺されているのは辛いことだ。しかし、ここでは私たちは少し静かにしなければならない。話すことは恐ろしくてできない…」
一方で、今回のハマスの行動を機にアイデンティティを変えたというアラブ系イスラエル人もいる。ドバイに住むIT企業のCEOはSNSで自らの決意を表明した。

アラブ系イスラエル人 IT企業CEO ヌセイル・ヤシン氏
「私は今まで自分をイスラエル系パレスチナ人だと思っていた。パレスチナも独立国家として存在すべきだ。私はパレスチナを愛しパレスチナに心を一部残してきた。しかし、そこは私の故郷ではない。だから今日から自分をイスラエル人だと考える。第一にイスラエル人、第二にパレスチナ人。私はパレスチナ政府のもとで暮らしたくないと確信した。つまりユダヤ人ではなくとも私の家はひとつ、イスラエルだ」
アラブ系イスラエル人のみならず、パレスチナ人は好きだがハマスは嫌いという人は少なくない。だからこそイスラエルのガザ地区攻撃がハマスを支持してはいないパレスチナの民衆をも傷つけている事が悩ましいのだ。
(BS-TBS 『報道1930』10月25日放送より)