「どんな気持ちで名付けたの?」被告は-

午後、裁判官と裁判員から、A女被告(当時)への質問が行われた。

「どういった気持ちで、赤ちゃんに名前を付けたの?」

A女被告(当時)は保釈後、殺害した我が子に名前を付け、戸籍を届け出ていた。

A女被告(当時)はうつむき目元を手で覆うと、声を殺して泣き出した。何か話そうとするが、声は出ない。落ち着こうと深呼吸しても、止まらない嗚咽。

その様子を正面からじっと見守る裁判官。

「答えられそうですか?難しそうなら次の質問に行きますし、頑張って答えられそうなら待ちますが」

目元を押さえたまま、泣きじゃくるA女被告(当時)。

「A女さん、何か答えたい?」

弁護士の質問にうなずいた。

「じゃあ待ちましょうか」

裁判長が告げる。証言台のA女被告(当時)は10分以上泣き続けた。

「先ほどの質問についての答えはどうなりますか?」

少し落ち着いたA女被告(当時)に、裁判官が問いかける。

しかし、沈黙はさらに10分以上続いた。
それでも、急かす者はいない。

「もう一度言ってください」

A女被告(当時)が口を開くと、再び同じ質問が投げ掛けられた。

「どういった気持ちで、赤ちゃんに名前を付けたの?」

「……」

A女被告(当時)は、本当に小さな声で、聞き取れないほどの小さな声で、自ら殺めた赤ちゃんに付けた名前の由来を述べた。