男子マラソンの定方俊樹(31、三菱重工)の走りには、三菱重工勢のアジア大会3大会連続メダル獲得がかかっている。9月29日から10月5日に行われるアジア大会(中国・杭州)陸上競技。男女マラソンが最終日に行われる。男子では14年仁川大会で松村康平(現三菱重工コーチ)が銀メダル、18年ジャカルタ大会では井上大仁が金メダルと、三菱重工選手が過去2大会連続メダルを獲得している。定方もメダルを目標としているが、夏場のマラソンでいかに自身の力を発揮するか、ということに集中している。
ニュージーランドで順調な“脚づくり”
三菱重工選手の3大会連続メダルが、自身の双肩にかかっている。それをことあるごとに指摘されるのは、避けられないこと。プレッシャーにもなる部分だろう。
「まったく考えない、と言ったらウソになりますが、過去の成績から周りが3大会連続メダルを取って欲しいと思うことは、自分がどうこうできる部分ではありません。それよりも自分ができることに集中しています」
定方は自身が置かれている状況を、冷静に受け止めている。大会3日前の天気予報では、10月5日の最高気温は25度。現地のスタッフは「少しずつ涼しくなっている」と感じているが、冬期のような高速レースにはならない。
「代表が決まった頃は“楽しみ”という気持ちだけでしたが、大会が近づいてきてやはり、緊張もしてきました。(松村と井上の)2人の実績を考えての緊張ではなく、暑さの中で自分の力をしっかり発揮しないといけない、と考えることによる緊張ですね。だから2人にも、暑さ対策をどうやっていたかを聞きました」
定方を取材したのは9月中旬。すでに“脚づくり”(長い距離を走り続ける能力)を行う段階は終わり、そこに関しては良い練習ができていた。2月末の大阪マラソンの結果(自己2番目の2時間07分24秒で日本人4位)で代表に選ばれたが、そのときは1月にニュージーランドで脚づくりのための練習を行った。今回は7月末から8月中旬と、8月末から9月9日まで、2回に分けて同じニュージーランドで練習を行った。
「1月と違うのは、ニュージーランドが冬だったことです。練習のタイムも良かったですし、良い走り込みができて、脚がしっかりできている。“粘れる脚”ができたと思います」
日本に帰国して長崎と北海道で練習を行い、暑熱馴化を行っている最中の取材だった。レース中の暑熱対策については、給水や手に持つ保冷剤など日本の暑さ対策のノウハウがある。現段階ではまだ明かせないが、それにプラスして新たな方法も考えているという。