母への電話「僕、実はゲイなんだよね」

“ありのままの自分”で生きられる世界をアメリカで知ったことが、最愛の家族へのカミングアウトに向けて、背中を押してくれた。
與さん
「『僕、実はゲイなんだよね』って。もう緊張してたので、あんまり細かい内容を覚えてないんですけれど。サラっと言った気はします」
「愛してる家族がやっぱり自分を嫌ってしまうんじゃないかって、それはもうずっと思ってました」
息子から国際電話で打ち明けられた時の思いを與さんの母が話してくれた。
與さんの母
「もっと早くに受け入れてあげられてたらなって。もうどんだけ苦しんでたんだろうなって思ったんで、ほんと申し訳ない気持ちでいっぱいです。今でも。家族はお兄ちゃんもお姉ちゃんもすぐ受け入れたんですが、真(司郎)の一番の心配、不安な部分は甥っ子、姪っ子のことだったんですね」
與さんには自分自身にバッシングが向けられたとしても耐えられる確信があった。しかし、甥や姪にあらぬ攻撃が及ぶことだけが恐れだった。
與さんは当時の心境について、「バッシングも含めて、心の準備は出来てたんです。甥っ子や姪っ子が学校でいじめられたらどうしようっていうのが一番最初にありました」と明かしました。
「どんな人でも好きになっていいんやな」甥っ子の柔らかな感受性

與さんの母にはその気持ちが痛いほど伝わっていた。しかし、カミングアウトの会場に駆けつけた小さな甥っ子の柔らかな感受性が、そんな心配や不安をすべて解き放ってくれたという。まるで雲が晴れたかのようなその瞬間を、與さんの母はこう振り返る。
與さんの母
「(甥っ子の一人は)今、小学校3年生の子なんですけれど、『真(司郎)のしたことっていうのは、真(司郎)が今日、言ったことっていうのは、どんな人でも好きになっていいんやな』って、『よかった』って言ってました。それ聞いて、何かすごい私の気持がほぐれて、うきうきしてしまいました」
與さんはいま、音楽活動やファッションブランドの展開など、精力的に活動している。“ありのままの自分”を通じて、LGBTQの人たちを力づけたいと話す。
與さん
「もう、とにかく、1人じゃないっていうことは、まず絶対に思っててほしい。すぐカミングアウトをするっていうことも(絶対の)正解じゃないっていうことも、わかっててほしいし。けれど、一人で抱え込むのは辛いと思います」
「自ら信頼できる人を自ら探しに行くとか、やっぱり、自分の今いる世界から一歩、ドアを開けて出ないと絶対に今のまま変わらないと思います。もちろん、それをしなくていい社会に世界がなってくれたら、もちろん、それがゴールだし、それは僕も思ってるんですけれど。そんな1日で(社会は)ポンと変わらないから。自分が今、辛いってなるんだったら、どうにか、まずは1人でもいいから、信頼できる人を見つけてほしいなって」
葛藤を抱えながら、J‐POPのスターになった青年が公にした心の声。2か月を経て、その声は確実に多くの人々の胸に届いている。
「どんな人でも好きになっていい世界」になることを信じて。
news23ディレクター 守川雄一郎