売上高経常利益率は過去最高。金融緩和は本当に必要か

――サービスの価格が上がっている。背景にあるのは人件費か。

第一生命経済研究所 熊野英生氏:
これはパートアルバイトの時給が主な理由です。飲食とホテルの二つは、非正規比率が3~ 4割で、稼働率が上がると人をたくさん雇わないといけないのですが、今や時給1200円、もうちょっと上がっている形になっているので、価格転嫁を進めていかないといけないサービス事業者が今たくさんいるということです。

――法人企業統計の売上高経常利益率は過去最高だ。

第一生命経済研究所 熊野英生氏:
もしも価格転嫁ができなければ、原価が上がって利益が圧迫されるので、利益率は下がるはずなのですが、それが上がっているのです。もちろん内訳は大企業が中心ではあるのですが、これは予想外。裏を返してみると、人件費はもしかするとまだ上げられるのではないかなという印象もあります。

――サービス業の人件費が売り上げに占める比率を示した人件費売上高比率を見ると、売上高に占める人件費の率は上がっているかと思ったら、最近はそうではない。

第一生命経済研究所 熊野英生氏:
少しびっくりするのは2022年、23年、特に23年は30年ぶりの賃上げをやったので、人件費が2%以上上がっているはずなのですが、それを含めても、売り上げの方が価格転嫁によって上がっているので、その比率は下がっていると。まさに人件費の負担は軽くなっているので、24年の賃上げも30年ぶり並みの賃上げができるのではないかと思わせるようなグラフです。

――2024年の春闘、時給も上がっていくと見ているか。

第一生命経済研究所 熊野英生氏:
とくにサービスの人件費が上がっていくと下がりにくいですから、日銀が掲げるデフレ脱却の条件にピタッと合致するという図式です。

そうした中で政府は経済対策を今作り始めた。最近のニュースでは、全体として需給のギャップがプラスに転じたという話がある。

――これはどう考えればいいのか。

第一生命経済研究所 熊野英生氏:
政府も日銀も実は頭の中はまだデフレ時代なのです。特に岸田首相も経済対策の取りまとめを10月中にと言っているのですが、今まで経済対策をやる根拠は需要に穴が開いて、その需要不足を政府が経済対策で注入するから穴埋めができると。ところが今穴が開いているかというと、長らく穴は開いていたのですが、この4-6月で需要が溢れ出していると。本当に必要以上の財政出動をやる必要があるのかと根拠がなくなったというデータです。

片方で政府は財政資金を出して物価を抑えようとし、片方で日銀は金融緩和を続けて物価高を招く円安を事実上を誘導している。

――この二つが矛盾しているというところに今の問題点がある。

第一生命経済研究所 熊野英生氏:
日銀がアクセルを少し緩めたとはいえ、まだまだ踏み込んでいる。それで物価が上昇するので財政出動でそれを穴埋めしないといけないと。日銀の金融緩和は本当に必要なのですかと思わせるような歪んだ図式に今なっています。

(BS-TBS『Bizスクエア』 9月16日放送より)