育ての母「お母様から渡されたバトンだと思う」
育ての母(49)
「なかなか子どもができず40歳になって一旦諦めようと思ったが、お互いの両親が亡くなり、家族が亡くなる中で、やっぱり家族が欲しいという気持ちをお互いに話して」

育ての父(53)
「家族は何人いてもいい。我々も2人とも50歳近い。若いうちに子育てをもう少し頑張ってやってみたい気持ちもありました。子どもは1人2人ではなく、3人4人と多い方がいい。3人目を受けることは何もためらいもなく考えていました」

夫婦は咲花(さやか)と名付けた。

育ての母
「この子らしい人生を歩んで花を咲かせてもらいたいなと思ってつけました」
産みの親・りかさんについてはこう話す。
育ての母
「10か月間、大事にお腹の中で育ててくれてありがとうということと、子どもがいない私たちにご縁をいただいたことに対しては感謝の気持ちでいっぱいで、ありがとうという言葉をお伝えしたい。とにかく、大事に大事に育てていきたい。それが私たちの使命。お母様から渡されたバトンだと思うので、幸せな人生を歩んでもらいたいというのは一番に思ってます。お母様自身に」

「とりあえず死に物狂いで働く」新たな生活へ
一方、りかさんは、シェルターを出る準備をしていた。
りかさん
「ここにずっといても迷惑かけるだけ。やっていけるかなという心配がある」
見送る前の娘を抱っこした写真は、大切に保存している。
りかさん
「これが(娘が新しい家族のもとに)行く前の写真。元気にしているかなと思っていたけど、集合写真見せてもらって、いいとこ行ったねと」

手放したことは正しかったのか、何度も自分に問いかけた。いつか娘から「会いたい」と言われた時、笑顔で応えられるようにしたいという。
りかさん
「現時点で生活が成り立っていないので、とりあえず生活を成り立たせないと堂々と会えない。今の生活を立て直すのが一番。もう少ししっかりした状態で会って胸を張っておきたい。とりあえず死に物狂いで働く」

りかさんはシェルターを後にし、新しい生活を歩み始めた。
特定妊婦の支援にむけ「連携は必要不可欠」
多くが民間に任されている特定妊婦の支援だが、福岡県では自治体との連携が進んでいる。
県から委託を受ける施設。県が予算をつけ、特定妊婦が暮らせる住まいの提供ができるようになった。
ママリズム 大島修二 所長
「様々な機関と連携をとって初めて安全安心に出産させられる。連携は必要不可欠なものの一つ」

この日、入所している妊婦から助産師が相談を受けていた。
特定妊婦の支援をする「ママリズム」の助産師
「お母さんが今一番聞きたいなとか、心配だなって思うことはどんなことですか?」

入所している妊婦
「心配?出産がどういう形になるのか」
女性は、重いつわりに苦しむ中、パートナーに執拗に「働け」と強要され、逃げてきた。出産後は子どもを1人で育てていくという。
入所している妊婦
「1人で抱えなくていいのでありがたい。出産や今後の生活は不安ではあるが、ここで色々教えてもらったり、相談を受けてもらったり援助してもらえるので、安心感は大きい」
2年前から行政と民間が連携することで相談件数も増えた。いまは匿名の相談も受け付けている。
福岡県こども福祉課 犬束麻弥 主任主事
「少し相談のハードルが下がったので、今までこちらがアプローチできなかった特定妊婦にも支援ができるようになった」
