変えることよりも変わらないことが大事。日本は持続力が断トツ

アメリカの企業が開発したAI搭載の世界初の高性能歩行器「Camino」。この歩行器を使用することで、20種類以上のデータを集めることができ、様々な病気の前兆がわかる。代表は25年間パーキンソン病と戦った父を介護した経験を持つ。その経験から高齢者の健康な生活をサポートしたいとAI搭載の電動歩行器を開発したのだ。

――この企業のサポートを決めた渡部氏の思いとは。

渡部志保氏:
高齢化社会日本でどうやって高齢の方が自由に歩いて、より長く健康でいられるかというところはすごく大事なポイントなので、支援することにしました。スタートアップはなぜこれをやっているのかというストーリーが創業者の人たちにはあって、これを命をかけてやっているという人たちと出会えるので、私も人生をかけてやらなきゃなと、気持ちが律せられるところは日々あります。

――こうすればもっと楽しいのにとか、こういうふうに変えていけると思うことはありますか。

渡部志保氏:
変えることよりも変わらないことが大事だと思っています。例えば、私は神戸で被災をしているのですが、子供心にも印象に残ったのが、地震の後は瓦礫の山みたいな町で、コンビニが壊れていて、レジにも人はいない。でも、みんなお金を入れて食べ物を取って行っていたり、近所の人が10円玉をたくさん入れた箱を公衆電話のところに置いて、電話できるようにしていたりとか。ああいうコミュニティの繋がりとか人の温かさとか、自分たちの価値観からあまりぶれないイコール、マイペースだとか、世界がうらやむ日本のもの作りという文化もありますし。

渡部志保氏:
日本は持続性とかマラソンが得意だなと思っていて、老舗の企業が世界一多い国と言われていたりするので、断トツで持久力がすごくあるのかなと。それが日本のソフトパワーというか、耐える力とか、どんどんそこで尖っていくみたいな。それは本当に唯一無二だなと思います。

――日本が今必要としていることや足りないことはどんなところにあるのでしょうか。

渡部志保氏:
もっとできるんだろうなと。もし、日本が他の国と同じような発展を遂げるならば、多様性というのはあるかなと思います。表面上の多様性だけではなくて、私自身も子供を見ていて思うのですが、1人1人違いますし、子供の頃の自分は120%出して生きているじゃないですか。でも、社会に出ると生産性も求められるので、凸凹した個性が丸くなっていくということも必要だったりすると思うんです。ある程度のところまで生きると、また凸凹を思い出してみてもいいんじゃないかなと。それが人間ならではというか、自分が若いときにどういうふうに感じていたかというのは自分のアイデンティティの一部なので、個性を応援するとか多様性とかというのは言うは易しですが、ずっとみんなでリマインドしながら大事にしていけばいいんじゃないかなと思います。

――「わたしのサステナ・ライフ」ということで、趣味や日課は?

渡部志保氏:
日が沈んだ後の夜散歩が大好きです。夜の街を探検しながら、人間ウォッチングをしたり、空を眺めて自分の小ささを実感したり、割と散歩の中で自分のことを考えたり、自分との対話みたいな時間でもあります。

――渋谷の街を夜歩きながら、気づく自分がありますか。

渡部志保氏:
自分のことというよりは、世界のことや悩み事を考えたり。空を見ては、空って繋がっているんだなとか、自分はちっちゃいなとか、自分と世界の関係みたいな、いろいろ内省の時間をくれるというのが夜の散歩かなと思います。

(BS-TBS「Style2030賢者が映す未来」2023年9月17日放送より)