問題視される「メディアの沈黙」

■山﨑裕侍(制作・編集・監督)
 2020年に放送したドキュメンタリー番組は様々な賞を受賞し、書籍化もされた。表現の自由をめぐる危機というテーマ性が評価された形だが、裁判はまだ続いている。
 異論を排除する社会の風潮や、安保政策の転換など十分な説明もなく推し進める政治の本質は今も変わらない。排除行為をしたのは1人ひとりの警察官だ。だが、本当に排除したのは何者で、排除されたのは誰か。法廷で裁かれたのは一体何だったのか。劇場版制作にあたり、素材を見返し当事者や専門家を追加取材して作品を大幅に作り替えた。テレビでは伝えきれなかった問題の深刻さと、それでもなお声を上げ続ける人間の強さが浮かび上がった。
 私たちの社会に生じている分断と排除を考える機会にしてほしい。

 いまジャニー喜多川氏の性加害問題で「メディアの沈黙」が問題視されています。小さな声を聴くことができず、力の強いものに忖度し、圧力に屈する。しかし喜多川氏の問題に限りません。
 声を上げることの大切さ、その声を聴くことの意義、忖度しないメディアのあり方。私たちの映画は、そのことを問うものです。忖度ゼロで作りました。ぜひ映画を全国の多くの人に観てもらいたいと思います。

■⻑沢祐(取材)
 当時新人記者だった私は、まさかこの問題が映画になるとは思ってもみませんでした。「おかしいことはおかしいという」そんな当たり前のことを取材し続け4年。声を上げる大切さを追いました。