“生きた学校”として変わり続ける

「北海道に夜間中学をつくる会」共同代表・工藤慶一さん

 自主夜間中学「札幌遠友塾」の創設者の一人で、現在は「北海道に夜間中学をつくる会」共同代表の工藤慶一(くどう・けいいち)さんは、自主夜間中学と公立夜間中学校の連携の大切さを訴えました。

 「夜間中学の『公立』と『自主』が手を結ぶのは札幌が先駆けで、長い時間をかけて醸し出されたものです。(公立の夜間中学校の設置を促す)義務教育機会確保法が2016年にできて、今後は自主夜間中学への公的支援の実施などを盛り込んだ法律の改正が必要です。夜間中学は市民がみんなでつくるもので、新しい当事者(=生徒)に対応するために、“生きた学校”として変わり続けることが大切です」。

 報告の後、生徒の一部の約30人は、会場の椅子を車座に並べ替えて集まり直し、一人一人が入学に至った経緯や現状をざっくばらんに話し合いました。そして、課題や将来の希望を共有し、予定された時間を過ぎても、互いを励まし合うように、学友の話に耳を傾けていました。

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「2023年度北海道夜間中学交流会」実行委員長=「札幌遠友塾」代表・黒澤晴一さん

*「2023年度北海道夜間中学交流会」実行委員長で「札幌遠友塾」代表・黒澤晴一さん
 「自主夜間中学は週1~2度の授業でゆっくり学べる、公立は週5日でしっかり学べる、それぞれの役割があります。公立の星友館ができて、生徒さんには選択肢ができました。いずれも最近は不登校経験者や、一旦、社会に出て勉強の必要性を感じて学び直す人が増えています。もちろん、戦後の混乱期に中学校へ通うことができなかった高齢の方もたくさんいらっしゃいます。そういう意味では『戦争はまだ終わっていない』ということができるでしょう。道内には学びたくても学ぶことができない、あと一歩を踏み出せない人たちがまだまだいます。そうした人たちに夜間中学の存在を知ってもらい、豊かな時間を過ごしてもらいたいと思っています」。

【連載記事のラインナップ】
プロローグ 開校2年目の夏~札幌市立星友館(せいゆうかん)中学校
エピソード1 モロッコと清龍~異国で生まれ育ったある日本人の場合 その1「思い出したくもない過去」
エピソード2 モロッコと清龍~異国で生まれ育ったある日本人の場合 その2「奇跡の来日」
エピソード3 農作業と入院~少女時代を取り戻す82歳と72歳の青春
エピソード4 同級生の前にさらされて…不登校経験者・Y(19歳)
エピソード5 「虐待で育ったから…」父子で通う同級生親子
エピソード6 3時起床23時就寝…もっと勉強したい56歳
エピソード7 モロッコと清龍~異国で生まれ育ったある日本人の場合 その3「再びホームレスと…」

*注1)北海道内にある自主夜間中学(計5校):札幌遠友塾函館遠友塾・旭川遠友塾・釧路くるかい北見夜間中学

*注2)札幌市立星友館中学校は、入学を随時受け付けています。9月から12月までの間に受け付けの場合は来年4月入学となり、来年1月から8月までの間に受け付けの場合は来年5月から10月までの間の入学となります。詳細は同校へお問い合わせください。

◇文: HBC・油谷弘洋