なぜ学ぶのか?なぜ学ぶことができなかったのか?

校舎の前に建つ二宮金次郎像

 札幌の繁華街、すすきのにネオンが灯る頃、その学舎(まなびや)に人々が通学して来ます。札幌市立星友館中学校は、すすきのに隣接する一角に、去年4月開校した北海道で唯一の公立夜間中学校です。高齢者、不登校経験者、外国出身者…通うべき時期に中学校へ行くことができなかった人が在籍しています。10代から80代までの多様な老若男女が、中には過酷な経験をした人が、夜の帳(とばり)の降りた校舎に机を並べています。なぜ学ぶのでしょうか?なぜ学ぶことができなかったのでしょうか?何を求めて集うのでしょうか?星空の下、学び直しをする人々のそれぞれの事情と姿をお伝えします。
 まず、舞台となる学校とは?夜間中学校を巡る状況は?プロローグ・開校2年目の夏~札幌市立星友館(せいゆうかん)中学校です。

星を友に学ぶ

校章

 校舎に入ると、下駄箱が並ぶ薄暗い玄関に、校章がバックライトに照らされて浮かび上がっています。星の形に似た麻柄模様が校章に選ばれたのは「真っ直ぐに、どこまでも高く成長する」という思いが込められ、夜空の星を友に学ぶ人々にエールを送っています。

高齢者・不登校経験者・外国出身者…それぞれの過去

校舎

 夜間中学校は、義務教育を修了できなかった人たちのために設置されています。高齢の生徒では、終戦直後の1947年に義務教育の期間が6年から9年に変わって新制中学校が発足した時期に、社会の混乱や経済的な事情で進学の機会を逃した人が多くいます。また不登校を経験したり、出身国の事情で十分な教育を受けることができなかった外国出身の生徒も増えつつあります。このため国は、各都道府県や政令指定都市に最低1校の設置を目指して教育の場を増やそうとしていますが、公立の夜間中学校の開設は、今年4月の時点で23都道府県の計44校に留まっています。