大きさ世界一!「世界最強のトカゲ」は絶滅危惧種

続いては「大きさ世界一」。世界最大のトカゲが棲んでいるのが、インドネシアの世界遺産「コモド国立公園」。コモドオオトカゲ、別名コモドドラゴンという体長3メートル、体重100キロに迫る巨大トカゲです。しかも肉食で自分の10倍もある水牛を倒すため「世界最強のトカゲ」とも呼ばれます。番組では、コモドドラゴンに襲われたという人も取材しましたが、巨体に襲われた恐怖の体験・・・ほとんど怪獣みたいなトカゲです。しかし生息しているのは国立公園になっているコモド島と周辺の小島だけで、今や3000頭にも満たない絶滅危惧種。この貴重なトカゲが生きている場所だからこそ、コモド国立公園は世界遺産になったのです。
直径1メートルの世界一大きな花 強烈な異臭を放つラフレシア

インドネシアには、世界一大きな花を見ることが出来る世界遺産「スマトラ島の熱帯雨林」もあります。ラフレシアという植物の花で、大きさは直径1メートルもあり、見ている人と比べるとその巨大さは一目瞭然。他の植物の根に寄生して栄養を取っているため、茎も葉もなく、花だけが地面に咲いているのが特徴です。かつて東京・上野の国立科学博物館にラフレシアの花の実物大模型が展示されていて、小学生の時にその巨大かつ異様な姿にビックリ仰天しました。以来ン十年、「一度、実物を見てみたい」と思い続けていたのですが、世界遺産の番組を担当するようになってようやく実現しました。ラフレシアは、マレーシアの世界遺産「キナバル自然公園」にも生息していて、そこでついに実物とご対面。強烈な匂い、なにかが腐ったような異臭を放っていたのが、小学生の時に見た模型との最大の違いでした。ラフレシアはこの匂いでハエをおびきよせ、ハエに自らの花粉を運ばせて繁殖していたのです。
他にも「広さ世界一」とか「長さ世界一」など、世界遺産には世界一のものがいろいろあるのですが、それにはワケがあります。世界遺産になるための基本条件は、「顕著で普遍的な価値」をもつこととされます。英語だとOutstanding Universal Valueと言い、世界遺産の関係者は「OUV」と略して使います。新しい世界遺産を決める国際会議=世界遺産委員会の審議では、「この候補はOUVがある」とか「OUVの視点で問題がある」などと、このOUVという言葉が飛び交います。高さにしろ、大きさにしろ、具体的な数値はどこの国・どこの文化でも共通する「普遍的」な尺度です。さらに世界一であることは、まさに「顕著な価値」といえます。このように具体的な数値にもとづいて世界一であることは、「顕著で普遍的な価値」=OUVという世界遺産の基本条件にぴったりなので、「世界一の世界遺産」がたくさん選ばれているのです。
(執筆:TBSテレビ「世界遺産」プロデューサー 堤 慶太)