6月13日に円相場は1ドル=135円台前半をつけ、1998年以来の円安水準となりました。
約24年前の1998年、大蔵省(現在の財務省)の財務官として円安阻止のための「為替介入」を指揮し、“ミスター円”と呼ばれた榊原英資・インド経済研究所理事長に、今後の見通しや、財務官の後輩にあたる日銀の黒田総裁が政策を変更することはあるのか聞きました。

■約24年ぶりの円安 「非常に特異なこと」「日本売りではない」

ーー24年ぶりの円安水準と聞くと、元財務官としてどういう心境になるのか?

24年ぶりと聞いたのは初めてですけど、まあ・・・その・・・「非常に特異なこと」が起こっているんだなという感じはありますけどね・・・

ーー1ドル=135円 24年ぶりの円安水準だが、現在の水準をどうみているか

「日本売り」で円安になっているわけではないので、あまり危機感は持ってないです。円安の原因ははっきりしていて、アメリカは金融引き締めをやっている、日本は金融緩和ですから、当然「ドル高・円安」になります。そういうことで円安になっているわけですから、非常にはっきりした理由があって円安になっているということ。

■いまは「円高の方がプラス」

6月13日、1ドル=135円を突破


ーー輸出産業にとって円安がプラスといわれてきたが 今回の円安は違うのか?

かつて、確かに「円安が輸出にプラス」と言われていましたが、いま状況は相当違っています。日本企業が相当、海外に出て、実際に日本から輸出するのではなく、現地で生産することが非常に多くなっています。そうなると円安じゃなく「円高の方がプラス」なんです・・・かつてロバート・ルービンが「強いドルはアメリカの国益である」と言ったけど、「強い円は日本の国益」・・・そういう状況になってきています。

ーー岸田政権としては急激な円安は望んでいない?

政権としては、いまや円安をあまり望んでいるという感じはないですね。むしろ「円高の方が望ましい」という判断をいま持っていると思いますね。

ーー「悪い円安」とみる人もいるが

そうは思いません。「悪い円安」というのは、おそらく「日本売り」で円安になるということですが、そういう事で円安になっているわけではないので、「悪い円安」だとは思っていません。

■「もうこれ以上は介入できないな」・・約24年前の為替介入・・今回は介入できるのか?

1999年 財務省内で


ーー24年前 円安阻止のために為替介入した件について

円高の介入は割に簡単なんですよ。それは、「円」はいくらでも持ってますから、「ドル」を買えばよい。まあ、効果が出るまで買うことができるわけで、実際に円高阻止の介入をやった時にはね、「とにかく勝つまでやれ!」と・・・こういう指示でした。たまたま為替資金課長が「勝くん=勝栄二郎(元事務次官)」という方だったから(笑)そう言ったんですけど、そういうことで、円高阻止の介入というのは楽なんですけど。

円安阻止の介入ってのは、逆に「ドル」を売らなければならないわけですね・・・そうすると「ドル」を売るといっても、持っている「ドル」というのは「外貨準備」がありますから、そんなにどんどんは売れないわけですよ。「外貨準備」を無くすわけにはいきませんからね。かつて円安で介入した時に外貨準備の「10分の1」を使って、「もうこれ以上は介入できないな」と思ったことはありますね。まだ10分の9、残っているんだけど、全部使い切るなんてのは、国がおかしくなっちゃいますからね。10分の1を使うと、「もうできないな」っていう・・・少なくとも、僕はその時そういう感覚になりましたね。もうドル売り(円買い)をして、介入をすることはできないなと、その時思いましたね・・・

ーー24年前の円安介入以降、一度も円安介入は実施されていないのでは?

やってないですね・・・だから難しいんですよ・・・円安に対する介入ってのは。ドルを売らなきゃならない。しかも持っているドルには限界がある。ということですから。

ーー今後、為替介入の可能性は?

介入は、円・ドルで介入する場合には、アメリカと合意しなければならないんですね。日本だけでやるわけにはいかない。そうすると、アメリカはいまの「ドル高」をむしろ望んでいるようなところがありますから、そうなると、いま介入することにアメリカが同意する可能性は「ない」わけですね・・・ですから、いまは介入はやりにくいですね。

ーー1998年の時はなぜ介入できたのか

円安介入ですか?はっきり覚えていません。はっきり覚えてませんけど、アメリカもそれ以上のドル高を望んでいなかったんだと思いますね・・・それで、介入するときはアメリカと連絡を取り合いますからね、あの時のカウンターパートは、ローレンス・サマーズという人でしたけど、はっきりとは覚えていませんけど、アメリカも介入という事に関して、「良い」ということだったんだと思います。

ーー現状だと介入はほぼ不可能?

アメリカが(介入に)合意する可能性は無いと思いますね。ですから、おそらく円安は、さらに進む可能性があると思います。