改築の校舎を見て「美しく希望にみちているだけに、当時の惨劇が聞こえてくるよう」

コロンバイン高校内部を訪ねる酒井肇さん
校内の天井を見上げる酒井肇さん

実際にコロンバイン高校の現場に赴いた酒井さんの目に飛び込んできたのは、遺族の取り組みで改築された校舎だった。事件が起きた2階の図書館の床は取り払われ、広々とした吹き抜けの空間となり、天井には森をイメージした絵が描かれていた。天井を見上げながら酒井さんが発した言葉を覚えている「美しく希望にみちているだけに、当時の惨劇が聞こえてくるようだ」と。

コロンバイン高校を参考に池田小でも校舎の改築を実施

コロンバイン高校銃乱射事件の遺族のドーン・アナさん

酒井さんを迎えた遺族のドーン・アナさんは次のように話した。

 (遺族のドーン・アナさん)
 「生徒達には、安全で癒される場所が必要で、希望が見える場所にしたかった」

その後、附属池田小ではコロンバイン高校を参考に校舎の改築が行われ、学校は安全対策の徹底に舵をきった。校内に設置された防犯カメラの映像は職員室で常にモニタリングされ不審者が侵入した際の実践的な訓練も続けられている。だが、事件から21年という時間の経過とともに「風化」を懸念する声もある。

酒井肇さんは言う「私たち遺族が恐れているのは"事件そのものの風化"ではなく、そこから得られた"教訓の風化"です」「アメリカでは、銃が関連する事件が繰り返されるたびに"一時的な世論の高まり"は見せるが、ふたを開けてみると何も変わらない...」銃の携帯が多くの州で認められているアメリカでは「権利」と「規制」の主張が半ば拮抗し、銃規制の議論はなかなか進まない現状がある。ただ最も安全であるべき「学校」で、子供たちをどう守るのかは、日米共通の課題だ。

事件から21年の追悼式典(大阪教育大学附属池田小学校)

今後、アメリカでどのような議論が展開されるのかを見守りたいという酒井さんは、事件から21年が経過した今も「学校の安全」を問い続ける。

毎日放送報道情報局 解説委員 三澤 肇