78年前から学ぶ 多くの犠牲を生んだ日本だからこそ発信できること

小川キャスター:
凄惨な被害を生んだ列車の襲撃事件ですが、こうした列車内の事件というのは証言を集めたり、実態を把握したりするのは難しいということです。というのも、居合わせた乗客は他人同士でお互いの名前すら知らず、被害者の特定が容易ではないためだそうです。

ただ、記憶を保存しようと尽力し、必死に証言を集めて語り継いできた方々がいらっしゃった結果、今回の榎本さんのように78年目にして新たな証言者として出てきてくださった方もいます。記憶をつないでいこうとすることの大切さを痛感しました。

今の戦争について考えるためにも、78年前の戦争から学ぶ姿勢を持ち続けなければいけませんよね?

小説家 真山仁さん:
今回のような貴重な証言を一生懸命拾うというのが大事だと思います。そして、なぜ民間人が狙われたのだろうというところに焦点をあてて欲しいですね。
民間人が狙われる一つの理由は、戦争の長期化があります。例えばベトナム戦争や太平洋戦争もですが、長期化すると、どんどん攻撃が本土に来て、いろんな理由で敵が乗ってるものと思って攻撃してしまうわけですよ。
この事件の次の日に広島に原爆が落ちて、さらに長崎にも原爆が落ちてますよね。どんどん民間人が犠牲になることがエスカレートしていることは、記憶にすごく残さなきゃいけないことだと思います。

小川キャスター:
この事件も終戦の10日前という出来事ですが、今のウクライナの戦争も長期化して犠牲となる民間の方々、一般の方々も増えていますよね。

真山さん:
ウクライナの問題、長期化しているというのは大変問題だと思います。どんどん民間人が犠牲になっていきますよね。
やっぱり78年前にこういう経験をした日本人は「戦争をやめましょう」と、もっともっと発信していくべきですし、現地に入るジャーナリストの方も戦況より、国民の「もういやだ」「戦争なんてやめてほしい」という声を世界に発信することで、戦争をまだ推進しようとするのを止めなければいけないという時にきているんですよね。やっぱり日本はもっと積極的に語る義務があると思います。

日本は戦争をしましたけど、結果的に多くの犠牲を出してしまったことは事実ですから、犠牲を生んだ我々としては、戦争を長期化してはいけないということをもっともっと世界に発信してほしいなと思います。