「今も子育てをしている」遺族から遺族にかけられた言葉の意味は

工藤奈美さん
「今も子育てをしているんだよ。亡くなったからいないんじゃなくて、あの子とは心はつながっているのって、一番手がかかる子だよ。こんだけ親を泣かせて苦しめて闘わせて。絶対起こしちゃいけないってこれから伝えていく役割を与えられて。本当に手がかかるのよ、頭の中はあの子でいっぱいだしね。やんちゃやね、そういうことなのよ」
その言葉にみかさんは、また涙を流しました。でもその涙は、移動中のものとは少し違いました。やんちゃな息子を思う、これからも続く子育てを想像する、母親の涙でした。
母・みかさん(仮名)
「こういったことは二度と起こってはいけないと思っていて、それをうまく伝えられるような人になりたい。行動を起こせたらいいなと、強く思いました。やはり息子に向き合って生きていきたい、頑張っていきたいと思います」

息子のために生きる。そして二度と同じ悲劇を起こさせない。そう決意して、遺族はその思いを語り始めました。遺族はこれから伝えていきます。この日を新たな一歩にして。息子のために歩みを進めます。
【記者MEMO】
亡くなった男子生徒は、とてもやさしく仲間思いの主将だったそうです。2021年に初めて母・みかさんにお会いしたとき、みかさんは私にこう言いました。
「現場には素晴らしい指導者がたくさんいる。そんな指導者のもとであれば、子どもたちはのびのびと成長していく。でも間違った指導では子どもたちは伸びない。そして今回の悲劇が起こってしまった」
勝利という「光」ばかりにとらわれた厳しい指導はその子が本来持っている「光」を奪いかねない。そのことを痛感させられた言葉でした。
これまでの私たちメディアの伝え方も、勝利至上主義を助長させた一つの要因になっています。社会に求められるスポーツの価値は、もちろん勝利だけではありません。スポーツを愛する一人として、その価値を見つけ、その在り方を分析する目を養っていかなければならないと感じています。
(スポーツキャスター 下地麗子)










