例年なら閑散とした夏休みムードの金融市場に急速に不透明感が台頭しています。日銀の政策修正に、唐突なアメリカ国債の格下げが加わり、日米共に長期金利が上昇しているからです。

日銀の政策修正受け、長期金利上昇

先月27日に日銀が長期金利の上限を0.5%から1.0%に事実上引き上げたことを受けて、期間10年の長期金利は週明けからジリジリ上昇し、3日には一時0.655%をつけました。慌てるような急騰ではありませんが、0.5%以上はいわば「未体験ゾーン」なので、株式市場も大きく反応し、日経平均株価は、利益確定売りもあって、2日間で1300円も下げました。
これまで力づくで、長期金利を0.5%以下に抑え込んできたので、一体、どのレベルが適切なのか債券市場は手探りですし、株式市場もその金利に見合う株価の水準が見えないということかもしれません。市場機能が失われているというのはこういうことなのかと、感じずにはいられません。落ち着きどころを市場が見つけるには、それなりの時間がかかるのでしょう。

フィッチが米国債を格下げ

こうした中で大手格付け会社のフィッチ・レーティングスが1日、アメリカ国債の格付けを、最上位の「トリプルA」から、一段階低い「ダブルAプラス」に格下げすると発表しました。フィッチはその理由として、今後3年間で予想される財政の悪化や、債務上限をめぐる政治的混乱をあげています。
これを受けて、アメリカの長期金利も昨年11月以来となる4%を突破、3日には一時4.19%にまで上昇しました。ダウ平均株価も2日は348ドルもの大幅下落となりました。
もっともフィッチの格下げ自体にそれほど目新しさがあったわけではありません。格付け大手3社のうちS&Pはすでに2011年にアメリカ国債を格下げしていますし、債務上限問題も2025年まで先送りすることで、すでに決着済みです。アメリカ国債が「最も安全かつ流動性ある金融資産」だという投資家の暗黙の了解にも、何の変化もないでしょう。