島の「生と死」に向き合う 看護師の「うたさん」
瀬戸内海に浮かぶ、香川県土庄町の豊島(てしま)。かつて住民一丸で産業廃棄物の不法投棄問題と戦い、今では瀬戸内国際芸術祭で「アートの島」としても知られるこの島に、命を支える診療所があります。

人口減少、過疎高齢化が進む島で、日々島の高齢者たちの「生と死」に向き合う看護師・小澤詠子さん、通称「うたさん」に密着しました。
夫を亡くした英子さん「人の初盆してるみたい」
8月、豊島の盆。去年夫を亡くした英子さんは、初めて一人で夏を迎えました。

(英子さん)
「池にいるカメは家族。『来いよ~』って言ったら寄ってくる。お父さんが呼んだってカメは来ないけど、私が呼んだらパーッと浮かんでくるから、『お母さんの声だけ覚えてるんだわ』ってお父さんいっつも言ってた」

「ここに座ってこれを眺めるのが、楽しみなの」
初盆、亡くなった夫を家に迎え入れます。

(英子さん)
「人の初盆してるみたい。1年って早いですよね。ついこないだみたいに病院でおったのにな思って」
「こうして夫の写真があそこにあるおかげで、『ちょっと今日は宇野(岡山)に行ってくるね』『小豆島行ってくるね』とか言って、誰も返事してくれないのに喋っていくんですよ」

「どこ行ってでも夫が付いてきてるな、という感じがどこかにあるわね。それがもう、年数に応じて薄れていくんだって先輩が言うんだけど、まだ私はね」

翌日、地区合同で行う初盆の行事。去年この地区で亡くなった3人の家族が、寺に集まります。英子さん、そしてうたさんの姿もありました。亡くなる直前まで看護師として寄り添った利夫さんの初盆です。
島のご詠歌を遺族があげます。うたさんは、これまで何人も見送ってきました。

(小澤さん)
「ご詠歌を聞いているとね、やっぱり、数年前生きてらしたときは一緒に聞いてたんですよね。でも今その人のために残された者が聞いてる、ていう。そういう繋がりがちょっと感じられるので」