島の「生と死」に向き合う 看護師の「うたさん」

瀬戸内海に浮かぶ、香川県土庄町の豊島(てしま)。かつて住民一丸で産業廃棄物の不法投棄問題と戦い、今では瀬戸内国際芸術祭で「アートの島」としても知られるこの島に、命を支える診療所があります。

人口減少、過疎高齢化が進む島で、日々島の高齢者たちの「生と死」に向き合う看護師・小澤詠子さん、通称「うたさん」に密着しました。

第1回第2回第3回第4回から続く)

「もう私は死ぬと思われますので」冨二さん(93)の容体が急変

島が本格的な夏を迎えようとしていた7月。豊島で妻・サツ子さんと二人で暮らす冨二さん(93)の容体が急変しました。うたさんは、急いで自宅に駆け付けます。

(小澤さん)「冨二さ~ん」

冨二さんは、自力での食事と排泄ができなくなっていました。

(冨二さん)
「随分とお世話なりました。もうこれで私も死ぬと思われますので」
(小澤さん)
「冨二さん、もうね、もう逝く準備しよんですか?」
(冨二さん)
「もう早く死にたいです、もうコテーンと逝きたいです」

(小澤さん)
「冨二さん、お葬式はね、まだほんのちょっと先ですわ。サツ子さんの準備ができるまでね、一人になる準備がいるでしょ」
(冨二さん)
「嬉しいな、楽しいな、生きてるって素敵だな。有難うございます、有難うございます、有難うございます。。。」

翌日、これ以上の自宅療養は無理と、島の福祉施設へ移ることになりました。長年夫婦で暮らしてきた自宅を離れました。

高齢者が多く亡くなる夏場 診療所は

8月、豊島の夏。診療所は特に忙しくなります。暑さによる熱中症や栄養不良など、多くの高齢者が不調を訴え訪れます。高齢者が多く亡くなるのもこの時期です。

(岩井医師)
「どんなん良吉さん。きちんとご飯食べれよんかな?」
(高田良吉さん)
「食べとる食べとる、いま食べてきたとこじゃ。まだ胸の辺におるんじゃ」
(小澤さん)
「じゃ、横にならん方がええんかな」

(岩井医師)
「唐櫃岡地区のおっさんもようけ死んだなぁ」
(小澤さん)
「仲間が、友達がどんどんいなくなるね」
(良吉さん)
「ワシは唐櫃岡では二番札じゃからな」
(小澤さん)
「いま一番が誰かな?」
(良吉さん)
「三好冨二さんが93か4ちゃうかな。それからミノルいうのがな」
(岩井医師)
「ミノルさんこないだ死にかけて蘇ったけんなぁ」
(小澤さん)
「ミノルさんも冨二さんも施設に入ったから」