ロシアの軍事侵攻による被害が拡大するウクライナでは、文化財の損失も深刻な問題となっています。美術館の職員に取材すると、貴重な収蔵品が持ち去られている疑いも浮上しました。
炎上する木造の建物。
激しい攻防が続く東部ドネツク州にあり文化的価値が高いとされる修道院です。ゼレンスキ―大統領はロシア軍が「歴史的な遺産」を標的にしたと非難しました。
ウクライナ ゼレンスキー大統領
「このようなことをする国家がユネスコに参加していてはならない」
ユネスコ=国連教育科学文化機関によると軍事侵攻が始まってから先月末までに、ウクライナでは博物館、宗教施設などおよそ140の文化財への被害が確認されています。
先月7日、ハルキウ州北部の村で撮影された燃え上がる建物。「ウクライナのソクラテス」とも呼ばれる18世紀の哲学者・スコヴォロダの記念館がロシア軍の攻撃を受けたのです。30年近くにわたり記念館の館長をつとめる女性は・・・
スコヴォロダ記念文学館 ナタリア・ムィツゥイさん
「スコヴォロダはウクライナの精神と意志を体現する存在です。これはウクライナ人の心を破壊する行為です」
一方、ロシア軍が制圧を発表した南東部マリウポリの「郷土史博物館」。3月の攻撃による火災で5万点以上ある収蔵品の大半が焼失したといいます。
マリウポリ「クインジ美術館」タチアナ・ブリ館長
「残念ながら、火災により作品が永遠に失われてしまいました」
避難先の首都キーウからオンラインで取材に応じたタチアナ・ブリさんは、博物館に属する「クインジ美術館」の館長でした。
クインジはマリウポリ出身の著名な風景画家。美術館では、攻撃に備えその主要な作品を安全な場所に隠していました。しかし・・・
マリウポリ「クインジ美術館」タチアナ・ブリ館長
「『“ドネツク人民共和国”の文化相』だという人物や職員が来て、展示品を持ち去ったんです」
親ロシア派が支配する地域に収蔵品が持ち去られたというのです。
親ロシア派が自称する「ドネツク人民共和国」は4月26日、SNSへの投稿で「作品を保護するために運搬した」と主張。マリウポリ市議会は、「2000以上の収蔵品が持ち去られた」と非難しています。
マリウポリ「クインジ美術館」タチアナ・ブリ館長
「すべてが悲劇です。美術館は私にとって自分の子どものようなものでした。恐ろしい夢の中にいるようです」
文化財への被害をめぐって、国連の特別報告者は先月、「人々のアイデンティティーの一部であり、その喪失は長きにわたり影響をもたらすだろう」と指摘しています。
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