■遠泳が生む「達成感」と「チームの一体感」
静商水泳部をけん引するのが平岡茂コーチ(66)です。2023年3月まで母校静商水泳部の顧問を務め、いまは外部コーチとして選手たちと向き合います。県内の高校で水泳の指導者を務める傍ら、遠泳との関わりも深く、1985年に伊東商業高校(現・伊豆伊東高校)チームとして初出場、94年から静岡市立商業高校(現・駿河総合高校)チームを率いて4連覇と華々しい成績を挙げてきました。母校での遠泳出場は2012年からで最高は2位。必ず上位に食い込んでいます。プールではなく海に挑むこと。その意義について名伯楽は、遠泳が「ほかでは得られない達成感」と「チームの一体感」をもたらしてくれるからと言い切ります。
「当然水泳部としてインターハイ出場を目指していますけれども、『それだけではなく、記録や結果にとらわれずに違うこともやってみたい』という気持ちもありました。伊東商業時代はすぐ近くが海で、遠泳大会があると聞いて『出て見ようか』と割と簡単な理由から出場しましたが、泳ぎ切った生徒の表情はとても生き生きしていました。『やればできる』と実感したそうです。12kmはとても長くて、熱海のゴール地点(熱海サンビーチ)に行ってもらえば分かりますが、はるか向こうに彼らが泳いでいるのがポツンと見えるんですよ。まして海を泳ぐことは日常ないことです。その距離を泳ぎ切ることで生まれる達成感は、ほかでは経験できない“人生の宝物”になります。そういうことから今も継続しています。インターハイの記録だけではなく、インターハイに行けない選手も含めて、『やりました』という達成感を味わってもらいたいなっていうのが1つありますよね」
静商でこの大会に出場するのは3年生。それは「部活動の節目」という意味とともに、3年生の頑張りが、選手同士だけでなく保護者やOB・OGも含めた一体感を生むからと平岡コーチは強調します。
「8月にインターハイは控えていますが、3年生は高校総体の東海大会が終われば本格的に進路を決めていく時期になります。部活動の節目として『3年生がまとまって出るのが一番いいかな』と考え、遠泳は3年生が出場することにしてきました。3年生のまとまりと横のつながりはいつも意識してきたことです。ですからどのように泳ぐかといった戦略は3年生に任せています。潮の流れを読む、波はどうか、3人がどのような隊列で泳ぐかもチームワークです。そうやって3年生が1つの目標に向かって団結する姿は今後のチームづくりで後輩たちの手本になります。そして保護者の方たちもいつも『ぜひ』にと遠泳の応援に来てくださいます。これは選手の親との会話の機会にもなります。チームの会話、コミュニケーション、いろんなことで役に立っていると感じています。多くの声援もがありますから今回は『4人一緒に頑張る』ことが本当に大切だと思っています」■(後編へ)














