「気候変動対策と同時に“脱成長”が必要」

人間には止められなくなる前に、何ができるのか…。地球温暖化の速度を緩めるためには温室効果ガスの削減。そのための第一歩が化石燃料の廃止だった。今年5月の広島サミットでも石炭火力の全廃時期が議論されたが、日本の反対で先送りとなった。日本は温暖化に対しどのようなスタンスなのだろうか。自民党の環境・温暖化対策調査会長を務める井上議員に聞いた。

元環境副大臣 井上信治 自民党幹事長代理
「政府も勝負の10年間だと思っていて、GX法案を2つ成立させた。150兆円という投資を促し、国費も20兆入れる。制度もいろいろ用意している。やってはいるが、事態の進行は想像していた以上に進んでる。法律は作ったがそれに甘んじることなくやらないと止められなくなってからでは遅い」
しかし、日本は再生可能エネルギーへの転換は遅れている上に、石炭を中心にした政策も戦争以前からのことだ。それに対し井上議員は日本の石炭火力の技術の高さや今後の水素やアンモニア混晶によって石炭比率を下げる計画などを力説した。政治の責任として経済的側面と環境面の両立は避けて通れないという。
元環境副大臣 井上信治 自民党幹事長代理
「石炭火力全廃をなるべく早く実現すべきと私も思います。ただ他方でそれには手順が必要で…。とりわけウクライナ戦争で世界のエネルギー情勢も変わっています。ロシアの石油や天然ガスが使えなくなってしまって…。暫定的に石炭火力ということに…(中略)端的に言って、エネルギーと環境っていうのは裏表になってしまう。どうしても環境に関心のある議員はエネルギー(産業界)に関心がある議員より少なかったり…。時代が進んでカーボンニュートラル宣言から意識は変わりつつあるが、与党の国会議員がもっと関心を持って対策を打ち出す必要があると思う」
これに対し斎藤淳教授は…
東京大学大学院 斎藤幸平 准教授
「正直GX推進法はグリーンウオッシュ(環境配慮をしているような見せかけ)だと思っている。石炭火力を使いながら、アンモニア混晶でごまかそうとしてる。アンモニアを作る過程でハーバー・ボッシュ法で化石燃料使いますし、実際のCO2削減量はそれほどではない。またCO2を回収貯蔵するってCCSって技術があるって言うんですがほとんど実用化に達していない。夢の技術に過度な期待をかけている。(中略)炭素税は2028年までやらないって言うし…。自民党に危機感が共有できてるのは不安…」
と、成立したGX推進法を非難とした上で、“成長を止める”のは勇気が必要だという持論を展開した。

東京大学大学院 斎藤幸平 准教授
「日本は非常に資本主義的な国。地球をどう守っていくかという意識が希薄。気候変動対策と同時に“脱成長”が必要。資本主義の大量生産大量消費が地球を破壊している。まぁ再生可能エネルギーと電気自動車。二酸化炭素は吸収して・・・。それで経済は発展して、脱炭素も進んでっていうけれどそんな簡単な話か。歴史的に見ると、経済成長と資源エネルギーの増大は極めて密接に連関して増え続けてきてる。これを急にあと10年20年で経済を成長させながら、二酸化炭素の排出は抑えるってかなり難しい。(中略)私は、省エネ、再エネや炭素税とかも大事ですけど、短距離飛行機の廃止フランスでは既に始まってますが、クルーズ船やプライベートジェット禁止とか、牛肉とかスポーツカーにはもっと重い税金をかけるとか・・・。それを低所得者の補償に使うなど大胆なことをしないとダメでしょうね」
(BS-TBS 『報道1930』7月25日放送より)