ゼロコロナ政策で「倒産と失業」が大発生

その背景には、倒産と失業があります。コロナによる大規模都市封鎖で多くの中小企業が倒産しました。東京財団の柯隆研究員は「中小企業400万社が倒産した」と分析しています。

日本のような経済封鎖に伴う企業への支援金は「1元も出なかった」と言います。

中国国家統計局によれば、6月の都市部の16~24歳の若年層の失業率はなんと21.3%に達し、上昇の一途です。

これは、都市部に戸籍がある若者に限った数字で、農村出身の出稼ぎの若年層は含まれていないので、実際の都市部の若年失業率は、もっと高いと見られます。

雇用環境がこれだけ悪ければ、消費に火がつくことなどあり得ません。

「経済安保」で、頼みの輸出も不振

頼みの輸出も不振です。4-6月期の輸出は前年同月比4.7%の減少でした。

欧米の利上げによる世界経済の減速に加え、経済安全保障の観点から各国が中国への依存を下げようとする動きが重石になっています。

2001年のWTO加盟以来、中国が自由貿易による恩恵をいかに受けて来たことか、中国は今、その「しっぺ返し」を受けつつあると言っても良いでしょう。   

こうなれば、かつてなら財政の出番のはずですが、開発事業で得た利益を原資にしてきた地方政府には、不動産不況で財政出動の余力がありません。

金融緩和も、6月はわずか0.1%利下げしかできませんでした。

不動産不況や企業倒産で抱え込んだ不良債権処理にあえぐ国有銀行を支えるためには、一定の利ざやの確保が至上命題で、これ以上の利下げは、したくてもできないということです。

深刻な不動産不況がデフレを本格化

不動産不況は深刻さを増しています。都市部の住宅価格指数は、2022年6月から前年比でマイナスに陥り、この6月もゼロ%。国家統計局の公式統計ですら、この低迷ぶりです。

実質的に経営破綻して再建中の不動産大手、中国恒大集団は17日に、延期していた2021年と22年の決算をようやく発表しました。

最終赤字の2年分の合計額は、5800億元、日本円で約11兆円と、一企業としては天文学的な数字になりました。保有する開発用不動産の評価額を引き下げたことが主因です。

もちろん債務超過です。要は「破綻」の形をとっていないだけと言えるでしょう。そして、恒大は象徴的な1社に過ぎず、中国全土にミニ恒工が数多くあると考えるのが自然です。

中国の不動産価格は日本のバブル崩壊のような急落には至ってないと言われています。しかし、値上がり=キャピタルゲインを当て込んだ不動産取引が逆回転を始めたのであれば、それが深刻化することは避けられません。

すでに低迷する中国経済に、深刻化な不動産不況がのしかかれば、デフレは本格化しかねません。

その時、隣国の日本や世界経済にどんな影響が及ぶのか、波乱が小さくないことだけは確かです。

播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)