快進撃を支えたのは「個」のチカラのレベルアップ
ただ、快進撃を支えたのは、何よりも、「個」のチカラのレベルアップだ。世界最高峰のイタリア・リーグ「セリエA」で8シーズンを過ごした石川選手は、「去年よりも、余裕をもってプレーを選択できるようになっている。」と口にしたように、まさに、大黒柱の活躍。ゲームな流れを読んだここ一番でのサービスエース、大事な場面を確実に決めきる力で、チームに勝利を手繰り寄せている。
セリエA挑戦の高橋藍選手 攻撃面で格段の進化
その石川選手を追って、学生の身でありながらセリエAに挑戦した高橋藍選手。イタリアのチームでエースのポジションを経験したことで、大きな武器であるレシーブの安定感は勿論、攻撃面でも格段の進化を見せている。
ブラジル戦、フルセットの勝利を呼び込むラストポイントは、相手の大きな3枚ブロックに対して冷静に、タイミングをずらして決めた技ありの1ポイント。大事な局面での「決めきる力」をみせつけた。
エースの西田有志選手の調子がなかなか上がらない中、存在感を示したのが宮浦健人選手。昨シーズンは、単身、ポーランドリーグに挑戦。「世界の高さを日常で経験することで、高さに対する不安がなくなった」と語ったように、フランスやブラジルといった大きなブロック陣相手にも、臆することなく自信をもって対応。ファイナルセット、ジュースにもつれこんだブラジル戦でも、大事なポイントを決め続けた。
課題とされた、ここ一番のサーブ力という点では、小野寺太志選手、山内晶大選手、高橋健太郎選手のミドルブロッカー陣の成長も大きい。本職のブロック、タイミングや角度を工夫することで速攻での攻撃の幅が広がったアタック面に加えて、サーブでは、左右様々な位置から繰り出す、長短を織り交ぜたバリーエーション豊富な“攻める”サーブを展開、世界の強豪を苦しめている。
高橋藍選手が、「チーム内の激しい争いの中で、個々がレベルアップしていけている」と語ったように戦うごとに進化を見せている男子バレー日本代表。ネーションズリーグ、ファイナルラウンド準々決勝の相手は、高さとパワー兼ね備えている。スロベニア。日本同様、多くの選手が、世界を経験することで、急激に力を伸ばしてきた。それでも、今の日本に死角はない。
「いい試合ができると思う。表彰台をつかみ取れる力は、今の日本にはある」と言葉を残して決戦の地に飛び立った石川祐希主将。悔しさをばねに、積み上げてきた日本代表の「決めきる力」を示す時が、ついにやってきた。