「水子がいる場合は“暗い所”“寒い所”にいるっていう設定です」

私たちが取材した67歳の男性は“旧統一教会は解散でいい”“終止符を打つべき”と訴える。
彼は元信者。高校生の時、街頭で勧誘され入信。40年前霊感商法による恐喝の罪で有罪となった経験を持つ。つまり加害者側だった。逮捕されたことで合同結婚式で結ばれた相手とも別れたが、その後も7年は教団にいた。しかし、自分の生活と文鮮明氏の豪遊ぶりのあまりのギャップに疑問を持ち始めて、脱会し職を転々とし当時を後悔しながら年金などで細々と暮らしている。
事件は1984年1月…。彼は信者3人で、青森に住む女性から「霊を成仏させる」と繰り返し1200万円を脅し取った。事前の調査で女性に中絶経験があることを知っていた彼は霊媒師を装った。

旧統一教会 元信者(67)
「だいたいいうセリフは決まってるんです。水子がいる場合は“暗い所”“寒い所”にいるっていう設定です。“寒いよぉ~、寒いよぉ~”というように今日初めて会うお母さんに“何とかして”って頼むんです。そうすると中には本当に泣いて“申し訳なかった”っていう人がいる…」

逮捕容疑は1200万円の恐喝だったが、壺やら高麗人参やら印鑑やら、手を変え品を変えだまし取ったお金は億単位だったという。集金額によって表彰されたこともあった。仲間とともに優勝旗を掲げる写真を見せてくれた。

旧統一教会 元信者(67)
「(売った物の)合計金額がトップだったわけです。私たちの東北ブロックが…。で、この旗もらったんです。旗に『世界のしあわせ』ってある。『世界のしあわせ』は『ハッピーワールド』(旧統一教会関連企業)の前身ですよね。おおもとは文鮮明ですよ。文鮮明から指示が出るんです。(中略)私らは神の国を実現するために経済活動をしてるんだから、人情挟んじゃいけない。(逮捕された時も)文鮮明だって刑務所に入ったんだから、そういう思いを体験できるいい機会だぞ、みたいなことを幹部に言われました。(中略)高校の時、あそこで教会について行かなければ良かったんだって思ったところで、もう後の祭りですから…。でも今更にはしたくない。教誨の方針にみんな苦労してるんですから。死人まで出てるんです。こんな教団許せるわけないです」

この男性はお金を奪った側だったが、加害者であると同時に被害者でもあると長年被害者を支えてきた弁護士の川井康雄氏は言う。

『全国霊感商法対策弁護士連絡会』 弁護士 川井康雄氏
「旧統一教会が奪っているもの、それはお金だけじゃなくって、その人の人生そのものだっていうことです。(中略)入信している時は考えを支配される。脱会した後は、活動中自分がしたことで思い悩む…。ほんと人生そのものが蝕まれるんだなって改めて思います」