開始時刻が迫ってきた。
「イチ・ニー・イチ・ニー」という声が近づく。保護者たちは何度も振り返って入り口を見る。紅白幕で少年たちの姿は見えない。

「今年二十歳を迎える18名の生徒が入場します」

スーツを着た少年たちが指先をピンと伸ばして入場する。保護者の拍手が出迎える。多摩少年院では少年同士は年齢を明かしてはいけない。上下関係に繋がらないようにするためだ。二十歳を迎える少年たちは教官にそっと呼び出され、他の少年に気づかれないように参加する。記念すべき日を少年院で迎えた少年たち。

親の前に立ち、感謝の手紙を読む。涙を流し、言葉に詰まる少年もいた。

少年「あっという間に・・・・成人を・・・」

沈黙は1分近く続いた。
院長が少年に近づき「読もうか」と声をかけて手紙を代読した。

院長(少年の手紙を代読)
『振り返ると、僕はいつも周りに人がいて、支えられて支えながらやってきました。一人では生きていけないと思った今、周りにいてくれる人々に感謝しています。これから始まっていく人生、思い切り人を愛し、人から愛される人間になっていきます。よろしくお願いします』

院長も涙を流していた。手紙を持つ手は震えていた。
保護者席からはすすり泣きが聞こえた。少年は涙を手で拭い、院長に頭を下げた。

取材を終えて… 立ち直るために 再犯で被害者を出さないために

少年院にいる少年は支えが必要だったにもかかわらず、社会から無視されたり攻撃されたりして非行に走った子もいるため、大人たちは彼らの力になるべきだと思っています。
自分や家族が少年犯罪の被害者になっても同じことを言えるのか?
正直なところ、私にはわかりません。
ただ、再犯を防ぐためにも少年たちを立ち直らせようとする大人は必要だと思います。
少年院を出た後、2年以内に再び少年院に入った者は9%。5年以内だと13.7%。少年たちの大人への不信感は根強いです。少年たちが非行に走った経緯を伝えることで少年を理解し支える人が増え、少年犯罪の被害者が減ることを願っています。

(news23ディレクター 垣田友也)