分厚い鉄扉の奥で出会った少年院の少年たち。
取材して感じたのは、複雑な生い立ち。未熟ゆえに犯した過ち。
立ち直りの可能性を秘めた彼らが取り組む新たな矯正プログラム「大人へのステップ」とは。news23の取材を通して、現場で感じたことを改めてお伝えする。

指先を伸ばして整列する少年たち

『スマホは少年たちがいるエリアに持ち込めません』
スマホを預け、教官のあとをついていく。ガチャッと重い音が響き、教官が鉄の扉のカギを開けた。外光が差し込み、グラウンドや何棟かの建物が見える。教官が行き来し、放し飼いされたニワトリが草を突っついていた。見回すと周りは高い壁。体育館に入ると朝礼中。少年たちが整列し院長の話を聞いている。

多摩少年院に収容されている少年は82人(2023年5月時点)。傷害や窃盗事件を起こした少年が多い。強盗事件に関わった者もいるそうだ。

彼らはどんな顔をしているのだろう…好奇心が湧く。教官からは「視線に敏感な少年もいる」と言われていた。少年たちに敬意をもって接したいと思っていたし、ジロジロ見ないようにした。彼らがどんな子たちか、まだわからない。

友情欲しさに「友達のために万引きしてあげた」

院内のインタビュー場所に少年が来てくれた。彼は入り口でサンダルを脱ぐと丁寧に揃えて正座した。傷害で少年院送致になった18歳。黒髪、短髪、あどけない顔。緊張した様子で私が話し始めるのを待っている。

--よろしくお願いします。答えたくない質問は答えないで大丈夫です
「わかりました」

--昔の話を聞かせて欲しいんだけど、子供時代の楽しかった思い出は?
「うーん…正直ほんとに楽しかった思い出はなくて。いつも家で暴力って言うか、そういうのを受けていたので。小学校の時から、友達が親から『僕とは関わってはダメ』って言われているのも何回か聞いていて」

「僕はADHD(注意欠如・多動症)とLD(学習障害)という特性があって。クラスに居られなかったり、よくわからないけど横柄な態度をとったり暴れたりしてたので。小4の時に担任の先生がみんなの前で僕のことを『悪いことで有名な問題児だ』って言った。それがきっかけで悪い方向しか居場所が無くなった」

「僕は本当に自信が無くて。遊ぶ時もモノとか、で、釣るって言うか。友達が欲しいものを万引きしてあげた」

--盗品をあげると友達は?
「ありがとうって。これで関係を維持できるって感覚になりました」