予約が3分で埋まる“民間防衛の基礎講座” 「認知戦」を知るための授業も

“民間防衛の基礎講座”と呼ばれるセミナーの予約は3分で埋まる。

日下部正樹キャスター:
「ここは台湾有事の際に、一般人がどう対応したらいいのか、それを学ぶための民間のセミナーなんですが、今ちょうど、包帯の巻き方、緊急医療ですね。みんなで習っているところです」

このセミナーが始まったのは2年前。月に10回ほど台湾各地で開催されている。受講生の6割は女性だ。

受講生(NPO職員):
「台湾人として注意するべきことは何なのか、国際情勢の行方について理解したいのです」

受講生(公務員):
「関連する情報や知識を備えていれば、戦争に対する不安を和らげることができます」

中国による情報工作=「認知戦」を知るための授業もある。

映っているのは「軍隊を動かす前に世論を動かす」という中国のことわざだ。中国はすでに 戦わずして勝つための「認知戦」を仕掛けてきているという。

2022年8月。台湾南部の都市・高雄で、駅のモニターが何者かにハッキングされた。

「老いた魔女の台湾への訪問は、中国の主権に対する深刻な挑発だ」

「老いた魔女」と名指しされたのは、台湾を訪問していたアメリカのペロシ下院議長のことだ。

台湾のセキュリティー会社によるとハッキングだけでなく“人民解放軍が海岸に集結した”という偽情報がネットで拡散され、市民の不安を煽ったという。

「認知戦」=情報工作の影響は、着実に出ているとみられていて、有事にアメリカが防衛に乗り出すかどうかを疑う人は増えているという。

「平和を望むなら戦う能力を身に付けなければならない」

セミナー発起人の一人、沈伯洋准教授は認知戦について学ぶ必要性をこう話す。

国立台北大学 沈伯洋 准教授:
「中国がどのような噂をでっちあげて台湾の世論や若者の意識を変えていくかわかりませんが、その手口に慣れておけば、戦争が起きた時、陰謀論やフェイクによるダメージはそれほど大きくはならないでしょう」

台湾有事の際、「民間の防衛組織に参加する」と考える人は2022年までほとんどいなかったが、この1年で急増した。

国立台北大学 沈伯洋 准教授:
「私たちの抵抗する意思が固ければ、中国に台湾を攻めるのは大きなリスクがあるとわからせて断念させることができます。だからこそ、平和を望むなら戦う能力を身に付けなければならないと考えているのです」