中国からの挑発が続き、“台湾有事”への不安を募らせる台湾の人たち。既に中国が“情報戦”を仕掛ける中、台湾に生きる人々の思いを取材しました。

「本当に有事になってしまったら私は自分の国のために最後まで戦う」

ウクライナでは武力による現状変更を推し進めようとするロシアとの激しい攻防が続いている。

現地で、その戦いに加わった台湾人義勇兵がいた。

姚冠均さん(29)。ウクライナ侵攻が始まった直後の3か月間、前線のドンバスなどで物資の補給や負傷兵の手当てを担った。

現地でもらったという聖書には、血の跡が…

姚冠均さん:
「(聖書を)服の中に入れていたんですが、逃げるのに夢中で誰の血かわかりません。地面に伏せながら撃たれた仲間を引っ張って撤退したときでした。当時は何も考えられない状況で、やるべきことをやり続けました。怖いと思い始めたのは後になってからです」

ウクライナに行く前はコーヒー豆を販売する経営者だったという。

ーーなぜですね、義勇兵の形で参加しようと考えたんですか?

姚冠均さん:
「率直に言えば、自由のためです。もしロシアがウクライナを取り込めば、中国も私たちを攻めるでしょう。大が小を虐めるのは駄目だと声をあげる人がいなければ、同じことが起こります。単純にそんなことは起きてほしくないだけです」

中国が台湾を「中国の一部」と主張するのは、歴史的な経緯があるからだ。

日本の植民地だった台湾は戦後、当時の中国=中華民国の統治下に入ったが、その後、国民党と共産党との主導権争いが内戦に発展。

敗れた国民党は台湾へ逃れて、そのまま中華民国を名乗り、1949年、大陸には新たな中国、つまり今の中華人民共和国が建国された。

74年前の対立が今も重くのしかかり、中台関係が緊迫する度に人々は不安な思いにとらわれてきた。

姚冠均さん:
「どんな時代も試練があります。第二次世界大戦の時に多くの国は戦って生き延びましたが、不幸なのは、数多くの問題が解決されないままここまで残されたことです。これらの問題が私たちの世代で解決できるなら、不安や悲観の中で過ごす生活を次の世代に引き継がなくても済みます。本当に有事になってしまったら私は自分の国のために最後まで戦うと思います。皆が尊厳を持って生きるために」

有事を本気で考えはじめたのは姚さんだけではない。