「戦争はすべきでない。平和的に共存すべき」 “対立の原点”に加わった兵士の思い

中国と台湾。その対立の原点である国民党と共産党の内戦。それに加わった兵士に会えることになった。
山奥へと進む先に現れた立派な門構え。「栄誉国民の家」との名がつけられたこの場所は、台湾当局が用意した退役軍人のための集団生活施設だ。

住民のひとり、藍英傑さん(90)。生まれは中国大陸の広東省。国民党の兵士として内戦を戦い、台湾に逃れてきた。
藍英傑さん:
「14歳の時に入隊しました」
ーーどうして国民党の軍に入隊したんですか?
藍英傑さん:
「私は親がいなくて、孤児だったのです。生まれる前に、父親が肺の病気で亡くなってしまって…」
極度の貧しさから脱しようと、わけもわからず入隊したのが国民党側の軍だったという。
ーー共産主義の意味は知っていました?
藍英傑さん:
「意味は分かりませんでした。学ぶ機会もなかったですから」

惨敗した上海戦で受けた傷が、今も痛むという。
藍英傑さん:
「私は伝令兵でした。空からも、海からも、砲弾が雨のように降ってきました。私の周りには、遺体が横たわっていました。左には共産党軍の遺体、右には国民党軍の遺体。全部学校の運動場に置かれていました。背丈よりも高い山になっていました」
裏切り者として弾圧される恐れから命からがら海を渡ってきた。台湾では歓迎され、「反共の義士」だと称えられたが故郷を忘れたことはない。

藍英傑さん:
「私は中国人として生まれて、先祖を忘れることはできません。私は私の国を愛しています。政治の質問に関して本音は言えませんが、一つだけ言っておきたい本音は、私は日本人も好きで中国人も好きです。皆同じ顔をしてるんですから。人間として偏見を持ってはいけません。戦争はすべきでない。平和的に共存すべきです」