北海道の知床半島沖で沈没した観光船「KAZU I」について、運輸安全委員会が運航会社社長らの証言を盛り込んだ調査報告書案を公表しました。

去年4月、知床沖で観光船「KAZU I」が沈没し20人が死亡、6人が行方不明となっている事故をめぐり、運輸安全委員会は社会的関心が高い事故について報告書をまとめる前に、関係者や学識経験者から意見を聞く意見聴取会を来月26日に行うと発表しました。

意見聴取会に向けて運輸安全委員会は運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長や、「KAZU I」の前の船長、同業他社の社員らの証言を盛り込んだ調査報告書案を公表しました。

この中で、桂田社長は、新型コロナの影響で2020年に売り上げがおよそ3分の1になり資金繰りが厳しくなったため、運航体制を縮小し、船長経験者らを雇い止めにしたと証言。その後、運航することになった経験の浅い船長らは、経験豊富な船長経験者らから必要な知識を教わることができなかったとみられています。

「KAZU I」の船長で死亡した豊田徳幸船長は2020年8月から甲板員をおよそ4か月経験した後、船長になりましたが、「KAZU I」の前の船長や同業他社の社員らは知床で観光船の船長になるには甲板員として3年間ほど経験を積む必要があるとしています。

また、事故では、船首付近にあるハッチのふたから海水が流入したことが沈没の要因と推定されていますが、事故2日前の救命訓練に参加した同業他社の社員は、ハッチのふたを閉めることができず、およそ3センチ浮いている状態だったと証言しました。

ハッチのふたの不具合について桂田社長は豊田船長らからの報告はなく、認識していなかったと述べたということです。

安全委員会はこれから聴取会で意見を述べる「公述人」を募集し、聴取会での議論を経て最終報告を取りまとめます。

聴取会は、日航機墜落事故やJR福知山線脱線事故などでこれまでに8回開催されたことがあります。