地震とともに始まった“謎の地殻変動”
地震の原因を探るうえで1つの鍵になったのが、地震活動とともに始まった“謎の地殻変動”です。
地殻変動は、地球のマントルを覆う「地殻」に力が加わり、年に数ミリから数センチ程度、ゆっくりと動く現象です。こうした大地のわずかな動きを捉えるために、人工衛星からの電波を受信して地上の位置を正確に測る「GNSS」と呼ばれる仕組みが使われています。GNSSは衛星測位システムの総称で、中でもスマートフォンの位置情報やカーナビゲーションに利用され、広く知られているのがアメリカの「GPS」です。
国土地理院が約20キロ間隔で全国約1300か所に電子基準点を設置しているほか、近年は携帯電話会社も基地局に独自の基準点を設け、精度の高い観測を可能にしています。
断層がずれて地震が発生すると、地表では地殻変動が観測されます。言い換えれば、地殻変動を測ることで、地下で断層がどう動いたかを調べることも可能で、GNSSのデータを地震の予測に役立てようとする研究者もいます。京都大学防災研究所の西村卓也教授は、地殻変動のデータから地下の断層に溜まっているひずみを調べ、地震を予測する研究を20年以上行ってきました。
その西村教授も「前例がない」と話すほど珍しい動きが、珠洲市で起こったのです。