災害が起きたとき、障害のある子どもをどう避難させるのか。2019年の台風19号で被災したあと、考え続けてきた福島県いわき市の障害者施設「どりーむず」の取り組みです。(全3回①②③のうち2回目)
今年2月、福島県のいわき市医療センターの講堂に、重い障害を持つ子どもたちが集まりました。約100人の聴衆を前に、母親たちが演壇に立ち、災害の実体験を語りました。

「避難所へ行く選択肢はなかった」
小日山弘美さん「10月12日は、朝からスマホの警報が鳴り響いて、テレビでも避難を呼びかけられていました」
水害の経験を語ったのは、小日山弘美さんです。2019年10月13日の台風19号で床上50センチの浸水被害に遭いました。脳性まひの息子は手足を自由に動かすことができません。台風19号では、前日から避難が呼びかけられていましたが、避難所へは行かず、自宅の2階に垂直避難していました。

小日山さん「そもそも私たちは避難所へ行くという選択肢は考えていませんでした。なぜならば、室内までバギーで入ることはできるのか。医療機器を使用するための電源を確保できるのか。十分なスペースはあるのか……」
息子のことを考えれば考えるほど、自宅にとどまった方が安全だと考えていました。「『水はこないだろう』と、根拠のない自信もあった」と話します。しかし、自宅は浸水。水が引いた後も困難な状況が続きました。
小日山さん「一番大変だったのは10日以上続いた断水です。汚水が上がった床を洗い流すこともままならず、家の中に大量の砂塵が発生しました。家族全員が体調不良となり、最も影響を受けたのは息子で、目はその日のうちに充血し、朝になると目やにでいっぱいになり、目が開かなくなりました。咳をするようになり、痰の量も一気に増えました」
障害者施設「どりーむず」をはじめとする関係者の力を借り、ようやく危機を脱することができました。