5月18日、都内屈指の高級住宅街にあるマンションに、東京地検特捜部が家宅捜索に入った。東証プライム上場のコンサルティング会社「アイ・アールジャパン」(東京・千代田区)の元副社長、栗尾拓滋容疑者(56)がインサイダー取引の疑いで逮捕されたのだ。栗尾容疑者は、社内では”接待のプロ”と呼ばれ、急成長する会社の業績を牽引した功労者の一人とされていた。しかし複数の関係者への取材からは、上場企業の取締役とは思えない危うい仕事ぶりが見えてきた。

(逮捕当日、栗尾容疑者の自宅に家宅捜索に入った東京地検特捜部の係官ら)

知人女性に資産形成を助言「損させたくなくて」インサイダー情報もとに推奨か

特捜部などによると、栗尾容疑者は2021年4月、自社の売り上げが当初の業績予測より低くなることを公表前に知り、知人2人に保有しているアイ・アール社の株を売るよう勧めた疑いが持たれている。2人は実際に計約1億8000万円で株を売却していた。関係者によると、2人はともに女性で、栗尾容疑者は以前から2人に「資産形成のため」として自社の株購入を勧めていたという。JNNは逮捕される直前の4月、栗尾容疑者を直撃した。

記者「お知り合いの方に取引を推奨したことはある?」

逮捕前の栗尾容疑者「全部ノーコメント。捜査中なので」

カメラを遮ってこう話した栗尾容疑者。しかし、関係者によると特捜部には「知人に損をさせたくなかった」と容疑を認めているという。いったいどんな人物なのか。

(栗尾容疑者について証言するアイ・アール社の関係者)

「接待のプロで、昔ながらの営業の方でした」

栗尾容疑者を知る同社の関係者はそう話す。1990年に野村證券に入社した栗尾容疑者は投資銀行部門の営業を長く担当。マネージング・ディレクターを務めた後、2013年に「アイ・アール社」に入社した。この会社は、株主総会でいわゆる“もの言う株主”への対応や、敵対的買収を仕掛けられた際に、どう対応するかなどを助言するコンサルティング会社。株の過半数を持つ寺下史郎社長に引き抜かれる形で入社し、すぐに副社長に就任した。