リアルを突き詰めた先にある“出来る視覚障害者像”

2歳の時、網膜にできた悪性腫瘍で視力を失った谷口真大さん(32)。2021年まで視覚障害のある「ブラインドランナー」としてマラソンなどで活躍し、現在は視覚障害者の人材育成に携わるほか、『ラストマン』と「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」とのコラボイベント、「ラストマン・イン・ザ・ダーク」で“バディ”として来場者のアテンドを行っています。

谷口真大さん
「ダイアログ・イン・ザ・ダークというのは、単なる視覚障害者の疑似体験っていうわけではありません。お互いの関係性がフラットになるっていう側面があります。障害の有無とか性別とか、立場に関係なく、本当にお互いがフラットになって助け合えるっていうのが暗闇の一番の目的ですね」

谷口さんは『ラストマン』においても、主に福山さんの所作の指導を担当しています。

ーー谷口さんはドラマを見て、どうですか?

谷口真大さん
「もう純粋に憧れます。子供の頃にスーパーマンに憧れたような、手の届かない憧れっていうわけではなく、自分も考え方一つ変えることで、皆実さんのような人間に近づけるような気がするんですね」
「もちろん能力としては全く敵わないですけれども、皆実さんのしたたかさだったりとか、強さもそうですし、何事もプラスに転換できる考え方っていうのは、私自身の日常にも変化がたくさんありましたね」

ーー印象に残るシーンはありますか?

「皆実さんが現場に向かっているときに、足手まといの人間が迷惑をかけていることはわかっている、と。皆実さんは本当に視覚に障害があるだけで、すごく他の能力は長けているのですが、出来ないことでサポートを求めることを恥ずかしがらない。『助けてほしい』というのを言えることが、本当にすごいなと思います
「どうしてもサポートが必要な部分は多くなってしまいます。私自身なんかも最近は割り切ってお願いすることが多いですけれども、やっぱりお願いしづらい、しにくいっていう人も中にはいらっしゃいます」

ーーこの『ラストマン』に関わってみていかがですか?

「すごく誇りに感じています。視覚障害をここまでリアルに取り上げてくださった作品というのは、今までになかったと思います。やはりどこかしらに福祉的なメッセージがあったりだとか、こういうところに困ったりするっていうシーンがありましたが、『ラストマン』に関してはリアルをつき詰めた中に、“出来る視覚障害者像”が存在するという捉え方がすごく新鮮だなと思いますね」

(2023年5月28日放送 TBSレビュー「ラストマン」が描く視覚障害 より抜粋)

「ラストマン・イン・ザ・ダーク」
純度100%の暗闇の中で様々な体験を楽しむ「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」とTBS日曜劇場『ラストマン―全盲の捜査官―』のコラボイベント。
福山雅治さん演じる盲目のFBI捜査官・皆実広見が過ごす世界を暗闇の中に一部再現し、参加者は視覚以外の感覚を駆使しながら、皆実の“見えない日常”を体験します。