「日本メーカーはかつてのビッグ3になる可能性がある」
日本は自動車産業の国際競争に敗れると予測するアメリカ人がいる。カーネギー国際評議会で日本経済を研究する、その人物は世界の予想以上に速いEVシフトに日本の自動車メーカーは頑なに抵抗してきたと指摘する。

日本経済研究者 リチャード・カッツ氏
「1970年代2度のオイルショックがあった。まず1973年と74年に原油価格が4倍になり世界中が不況に陥った。そして1979年と80年にはまたも4倍になった。その時日本が小型自動車をアメリカ市場に投入した。アメリカの消費者は当然それを買いたがった。日本車は良い車が多く、ガソリンをガブ飲みしなかった。あの時、燃費の良い日本車を見てGM・フォード・クライスラーのビッグ3は“これは一時的な出来事で、長くは続かない”と思っていた。成功し過ぎた企業は変化に気づかない。思わず目隠ししてしまう。ビッグ3は日本車の強さに気づかなかった」
その後も日本車は衰えるどころか、アメリカに工場を持ち急成長。ビッグ3が日本車の凄さに気づき、追随しようとしたときには時すでに遅し…。かつて国内シェア80%以上あったビッグ3は日本メーカーに大きくシェアを譲ることになった。EV市場における日本は、あの時のビッグ3だと、カッツ氏は言う。そして、あの時の日本車が今の中国車だ。
日本経済研究者 リチャード・カッツ氏
「ひとつのビジネスモデルで成功すればするほど、時代の変化を認識するのが難しくなる。以前は優れていたものが十分ではなくなる。どう変えればいいのかどころか、変える必要があることすら認識できなくなる。日本メーカーはかつてのビッグ3になる可能性がある」
アメリカの経営学者、クレイトン・クリステンセンは巨大企業が新興企業に敗れる時の経営理論を“イノベーションのジレンマ”と名付けた。業界を支配する成功企業が優れていた企業戦略ゆえに滅んで行くというジレンマ…。
経済評論家 加谷珪一氏
「イノベーションのジレンマの代表例として古い話ですが、帆船から蒸気船へのシフトがある。帆船メーカーは非常に優れた技術を持っていて大型の船も造れた。蒸気船のメーカーは小さな船しか造れず、当初は比較にならなかった。ところが時代が過ぎ蒸気船主流になった時、優れていた帆船メーカーは(蒸気機関にシフトできず)1社も無くなっていた。同じことがあらゆる業界で繰り返されてきた。当然自動車業界も例外ではない。内燃機関からEVに、ハード・オリエンテッドからソフト・オリエンテッド…。これは大きなパラダイムシフト(革命的変化)なので、イノベーションのジレンマが起こる可能性が高くなると思います」














