“妊娠相談できなかった” 「境界知能」「グレーゾーン」とは?

山本恵里伽キャスター:
小関被告を鑑定した興野医師も妊娠を相談できなかった背景にあると指摘している「境界知能」と「グレーゾーン」の特性についてです。

平均的なIQは85以上115以下と言われています。一方で知的障害と診断を受けるIQは70以下とされています。そしてどちらにも当てはまらない間が“境界知能”ということです。興野医師が行った知能テストでは、小関被告のIQは平均を下回る81。つまり境界知能だったということです。

そしてもう一つの特性“グレーゾーン”ですけれども、グレーゾーンというのは「発達障害の診断には至らないものの、一部症状が見られる状態」のことを言います。そして興野医師によりますと、小関被告には、▼集中力が続かない、▼後先を考えずに行動してしまう、といった発達障害の一つであるADHDの一部特性があったということです。小関被告が妊娠を相談できなかったのも、ADHDのグレーゾーンの特性が原因だと興野医師は指摘しています。

“生きづらさ”抱える女性たち 取材した記者は・・・

小川彩佳キャスター:
事件発生から裁判まで傍聴をして、そして取材を通して小関被告について、どんなことを感じましたか。

貴田岡結衣記者:
グレーゾーンの特性があるからといって、罪を犯していい理由には決してなりません。また、その特性のある人が犯罪を起こしやすいということでも全くありません。しかし、被告と同じように、生きづらさを抱えている人たちがいるのではないかと感じ、取材を続けていました。

小関被告は片付けができないとか、忘れ物が多いという一面もあり、幼い頃は親から叱られることが多かったそうです。興野医師は小さい頃から、ADHDやグレーゾーンを知っていれば、被告もこんなに自己否定をせず、また周囲の人も必要以上に責めることなく違う生き方ができたのではないかと話していました。

落語家 蝶花楼桃花さん:
グレーゾーンという言葉を知らなかったんですけども、まずはグレーゾーンだということを当人が認識するシステムがあることによって、事件を未然に防いだり、手を差し伸べたりということが、できるのではないかなと感じました。

小川キャスター:
繰り返さないためには、どうしたことが必要なのかですよね。全国で相次いでいる同様の事件があるわけですが、防ぐにはどういったことが必要だと感じますか。

貴田岡記者:
乳児の遺棄事件が相次いでいる中で、妊娠・出産をして遺棄してしまった事件を起こした女性たちを、どうしても「だらしない」とか「相談しなかったのが悪いんじゃないか」と、女性1人だけの問題として背景を考えることなく、“自業自得”という言葉でくくってしまっているのが現状だと思います。

しかし、こうした事件を繰り返さないためには、事件の事実に蓋をすることなく、女性1人の背景を見ないものとせずに声を上げにくい女性の存在を見つめ続けて、支援のあり方を考えていくことが大切だと感じました。

小川キャスター:
ソーシャルワーカーの方も、人は誰でも困ったときは助けを求めていいんだというふうに変わっていかなければならないと、おっしゃっていましたけれども、そうした環境・社会を作っていくのは、私達1人1人であって、私達1人1人が当事者意識を持って、どんなふうに向き合うかということでも大きく変わっていくのかなと感じました。