かつて日本はタバコ天国でした。地下鉄、飛行機、レストラン、どこに行ってもタバコが当たり前に吸えたものです。会議室はデフォルトでモクモク。路上の吸い殻も通常風景。そのタバコ、あなたはどうやってやめました? 私はコレでタバコをやめました…(アーカイブマネジメント部 疋田智)
大人の男はほとんど吸った
日本にタバコが伝来したのは1543年。鉄砲とともにポルトガル人が日本に持ち込んだといいます。紙巻きタバコの登場は1881(明治14)年。その後、タバコは手軽な嗜好品、精神の安定を得る道具として、さかんに吸われるようになりました。
当時の成人男性にとって、いかにタバコが当たり前であったかは、軍隊の扱いでも分かります。タバコは必需品的な嗜好品として軍で配給され、兵士達は精神の安定や、戦闘が終わった安堵をタバコとともに味わったといわれています。

終戦後も男たちはタバコを吸い続けました。
驚いたことに戦後の日本の税収の約20%はタバコ税だったといいます。もちろん物資不足の戦中戦後のこと、配給は1日3本。それでも、戦後の苦しい生活のなか、タバコは庶民が安らぎを得ることのできる数少ない嗜好品でした。
タバコがカッコよかった頃!
やがて高度成長期に入ると物不足やタバコ不足は解消し、日本はそれこそタバコ天国になっていきます。日本の成人男性の喫煙率は80%以上。タバコは成熟した大人がたしなむカッコいい嗜好品という扱いを受けたのです。

昭和の時代、刑事ドラマのラストシーンでは、すべての謎が解決した後、刑事たちがうまそうにタバコをくゆらせていたものでした。女性を救ったヒーローが、タバコを吸った後、オートバイで立ち去っていくCM。それを「ステキ」と見つめる若い女性(という幻想)。そういうのがタバコのイメージだったのです。
ところが……。