8年ぶり自己新の佐藤も44秒台に意欲

佐藤が静岡で出した45秒31は、8年ぶりの自己新記録だった。佐藤も前半は、中島と同じ考え方で走っていた。
「力感なくスピードを高めるトレーニングに重点を置いてきました。今まではとにかくスピードを高めることだけを考えて、かなりガツガツいき、体力も使って走っていましたね。今回の冬期は同じスピードでも、体力を使わずに走る練習を行ってきました」

余力を持って200mを通過して、200〜300mのタイムを上げる。静岡の200m通過は21秒4前後で、中島の静岡&木南よりも0.2~0.3秒速い。これは元々前半型だった佐藤と、後半型だった中島の違いから生じている違いだろう。

静岡の200m通過は以前の45秒台のレースと変わらなかったが、300m通過が32秒0前後で0.3秒速くなった。ラスト100mの走り次第で44秒台を出せる段階に来ている。

木南記念では若手成長株の今泉堅貴(筑波大4年)を、残り30〜40mで逆転してトップでフィニッシュした。
「静岡ではずっと前を走っていたので、競り合う感じではありませんでした。木南では今泉君に先行されましたが、最後に競り合って前に出られたのは収穫です」

44秒台への手応えもレース毎に大きくなっている。
「今年中には出せると思います。その先に(東海大の)高野進先生の日本記録(44秒78)がある」

佐藤は21年東京五輪4×400mリレー代表で、以前から代表チームを引っ張ってきた。東京五輪も3分00秒76、25年ぶりの日本タイ記録と健闘した。しかし予選を通過することができなかった。

22年は故障で代表入りを逃し、年齢的にも競技を続けることに弱気になっていた。「日本選手権で予選落ちして、心が折れかけました」

その佐藤を鼓舞したのが、オレゴンで日本チームが2分59秒51のアジア新記録で4位に入ったことだ。「一緒に練習してきたメンバーが世界の舞台で4位。次は彼らと一緒にメダルを取りたい、と強く思いました。今年は個人でも代表を狙います。44秒台を出した先に、4×400mリレーのメダルがある」

44秒台は今シーズン中の目標だが、現在の男子400m勢の盛り上がりを見れば、GGPで日本人2人目の44秒台が出ても不思議ではない。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)