「経済的支援は望んでいない。在留資格さえあれば自分たちでできる」

埼玉県川口市へ行った。日本で一番外国人が住む町だ。その数約4万人。人口比率で7%に当たる。市の南部にクルド人が多く住むエリアがある。隣の蕨市と合わせて約2000人が暮らす。
取材に応じてくれたのは2015年に息子と娘を連れ短期ビザで日本に来た40代のクルド人女性。夫は先に来日、難民申請していた。女性もトルコで反政府活動に協力していたので難民認定を求めた。申請中「特定活動」という在留資格を得て川口に住み着いた。
「特定活動」は健康保険も使え、就労も許可される。日本でも子供が生まれ現在6人家族になった。
ところが来日して6年、21年に難民申請が却下されるとその数か月後に「特定活動」から健康保険も住民票も就労資格もない「仮放免」に変更されてしまった。
「仮放免」は移動も制限される。彼女の母子手帳には子供が半年前に水疱瘡ワクチンを打たねばならないと記録があったが、病院に行けずにいまだ打っていないという。
子供の腕は水疱瘡のような跡があった。

クルド人女性(姉)
「(子供に)あなたの腕を見せて…。(水疱瘡の発疹がある腕を見せて)在留資格がないから子供のワクチンが打てない。(水疱瘡の治療もしていない)私たちの状況は非常に悪くゴミのようなもの。(夫は仮放免の延長のため入管に行ったら拘束された)収容所で夫は2度病気になったが薬はもらえなかった。彼ら(入管)は私たちを信じない。その後、健康状態が悪化した夫は病院に搬送された。(中略)私たちがこの状況を批判したり不満を言ったりすれば入管は私たちを収容所に入れるでしょう。だから静かにしているの…」

このクルド人の女性の妹も同じ状況だ。姉を頼って来日、子供を日本で2人授かったがなぜか一人3歳の子だけいま「特定活動」の資格が与えられている。

クルド人女性(妹)
「拘留されることを常に恐れている。(中略)在留資格を返して欲しい。経済的支援は望んでいない。在留資格さえあれば自分たちでできる。日本はクルド人の問題をよく知っているのに何故こんなことをするの?トルコは私たちが住める国じゃない。ここではクルド語が話せ、クルドの音楽が聴ける。トルコでは今それができない…」

難民認定されなくても、直ちに強制送還ではなく、「特定活動」「仮放免」などいくつかの“庇護”はある。だがこれら“庇護”では難民認定率の低さのフォローにはなっていないのが現状だ。