ヤフートピックス元編集長が考える「ローカルテレビ局の可能性」
ーそのようなところを鑑みたときの、これからの地方局・ローカル局のあり方、ネットも含めた関係性について、どのように情報を出して発信していくのが望まれるのでしょうか。

多分これまでの地方局の番組作りというのは、ローカルの視聴者だけを見てきていた訳ですよね。しかしそこで作ったコンテンツというのは、日本全国、世界中に流通していくポテンシャルがあります。視点をよりグローバルにすれば、全国区に対して発信する力を持つということは出来るんじゃないかなと思います。
ー逆に地方だからこそ見えるもの、地方にしか見えないもの、というものもあるかも知れないですよね
そうですね、なぜなら岡山・香川に一番長く、常にその場所を観察しているのは、岡山・香川のメディアしかいないからですよね。岡山・香川のことをよく知っているのは、まさにそこのメディアの人たちだと思いますけどね。
ーこれからテレビもネットもどうなるかというのは全く分かりませんが、そんな中で「地方局」と「ネット」というのは、どう関わりあって、どう展開していけばいいと考えますか?
「地方局・ローカル局ならではの視点を持ちつつ、全国の視聴者を意識したニュース作りをしていく」ことが、一つポイントなんじゃないかと思います。ローカル局であることをことさら強調しすぎると、見てもらう対象の人はやはり狭くなりがちですよね。それよりも「広く届けたい」と思うならば、やはりどこかで「地域・地方」という考え方を少しだけ横に置いて、ニュースを作らなきゃいけなくなるんじゃないかなと思います。

やはり地域一つの地域で起きてることというのは、日本全国で起きてることでもあるので、その「日本全国で起きているイシュー(課題)を地元の人たちがどう対応してるのか」という視点で取り上げるというやり方というのは、あまり試みられてないような気がするので、だから今、自分たちの情報がネットを通じて全国に開かれているときだからこそ、そういうことを意識してもいいんじゃないかなと。
テレビではできない「実験的な取組み」をぜひネットで
それを放送に載せるのは限界があるだろうから、そういう「実験的な取り組み」はインターネットでやってみたらいいんじゃないかな、というのが私のアイディアで、つまり放送と同じものをインターネットに載せても響かないんじゃないでしょうかと。
インターネットにはインターネットの特性があるので、別に「地域性」というのは意識しなくても番組・コンテンツは作れますし、そういうインターネットにまだ本格的に取り組んでいないメディアだからこそ、真っ白な状態でインターネット上に取り組んでみるといいのかと。今ある同じ物を外に出しても誰も面白がらないような気がします。
ー私たちも、テレビ局の立場で「ネットニュース」というまだまだ未開拓の地を自分たちのアイディアで切り拓いていける、という面白さはすごぐ感じています。
多分、これまでのメディアのインターネット展開で、いろいろうまくいっていないというのは、「地上波で流しているものをインターネットに流すから」であって、本当にアイディア次第でなんとかできると思うんですよね。
「放送局が地域にどう貢献するか」ということと、「自分たちの作ったコンテンツを全国にどう広めたいか」というのは、多分ゴールが別なので、そこも本当にアイデア次第だと思います。

【あとがき】
以前の「YouTube編」でも書かせて頂きましたが、若い世代のテレビ離れが加速していく中で、いまネット時代における「ローカルテレビ局の存在意義」が問われてきています。
その一方で、私たちの仕事は「放送を通じて地域に、地域の人たちに貢献する」ことが、ネットニュースの登場でさらにその先の「全国の人たちに」向けて発信できるチャンスを得ることが出来ました。
今回取材をさせて頂いた奥村教授がかつて在籍していたヤフーニュース、そのサイトだけでも、RSK山陽放送は2023年4月の1か月間で821万のPV(ページビュー)があり、おそらくユーザーの皆さんも知らず知らずのうちに弊社のニュースに触れていたかもしれません。

「読んでもらいたいニュースが読んでもらえない」というジレンマは抱えていますが、私たちローカルテレビ局はいま、新たな地平を切り開いている最中です。普段は気にすることはないと思いますが、ヤフーニュースの記事の右上に「RSK山陽放送」という緑と赤のロゴが現れたら、気に掛けていただけたら幸いです。