東京都内の理髪店で5年間修行した後、最先端の技術を学ぶため、ロンドンとパリへ。そこで得たものをかけ合わせ、帰国後に挑んだ“全日本選手権”では見事、総合チャンピオンになりました。

そして、日本代表として出場した世界大会では団体戦で優勝を果たし、“世界一”の栄誉に輝きました。そんな最初の10年間は「死ぬ気で取り組んだ」という阿部さん。その中で見えてきたものがありました。

【阿部勇さん】
「僕が嫌いだったのは“作業”を見ていたから。僕がよく言うんだけど『頭というのはキャンバスだよ』と。『絵を描くつもりでものを考えてみろ』と。自分で発想することをやっていくのが一番、それをやるとこの仕事がすごく好きになる」

『理容師の仕事は最高に楽しい“ものづくり”』。阿部さんは理容師の魅力をそう語ります。現在は一線を退き、後進の育成に力を入れている阿部さんが若手に伝えたいのはそんな仕事の“楽しさ”です。

【阿部勇さん】
「修業時代は厳しいというけど本当にきつかったですよ。きつかったですけど、今考えると、あのころが一番楽しかった気がするんですよね。5年10年頑張れば、あとは本当に楽しい仕事なので、これだけは若い人たちに分かっていただきたい」

理容師の仕事に向き合い、楽しさを見出して突き詰めてきた阿部さんの言葉は理容業界のみならず、全ての働く若い人たちも勇気をもらえるような言葉なのかもしれません。